現場の最前線にあるのは犯罪だった!
俺はもう20年近く、問題を抱えた家族からの相談を受け、
現場に行って解決するということをやってきているのだが、
家族のあり方も、時代によって刻々と変化しているのを感じる。
そして最近は、来るところまで来たなあという気がしている。
俺がこの仕事を始めたばかりのころは、
患者さんは圧倒的に、統合失調症や重いうつ病の人が多かった。
家族は世間体を気にしてごちゃごちゃ言うこともあるけど、
とにかく医療につなげることが先決、というケースがほとんどだった。
10年くらい前から、違法薬物の問題が増えてきたこともあり、
相談の内容にも変化が見られるようになった。
本人の言動がおかしいのを、家族は「心の病気」だと捉えて、
俺のところに相談にやってくるのだが、
ヒアリングや調査をするうちに、実は本人が違法薬物をやっていました、
あるいは犯罪を犯していました、ということが発覚する。
そういう依頼がどっと増えた。
当時も俺は、「とんでもない時代が来たな」と思ったのを覚えている。
しかし最近は、それすらを凌駕する状況である。
家族(親)が子供の犯罪行為に気づきながら、
それを隠蔽して、「心の病気」で片付けようとする。
そんな相談が増えつつあるのだ。
薬物乱用障害やストーカー事件が顕著な例だけど、
犯罪と精神障害の境界は非常に曖昧になり、
そこに大きなグレーゾーンが生まれている。
もちろん、こういった問題を抱えるひとたちに対して、
精神科医療による治療や、カウンセリングが有効なケースもある。
だが、それが犯罪行為である以上、
治療云々の前に、警察に相談(あるいは通報)しなければならない。
しかしヤバいケースの親に限って、
警察に通報する、相談するという手段をとってない。
あるいは相談には行っていても、犯罪の部分は巧妙に隠し、
「子供が暴れていて困る」など、家族にとって都合のいい情報しか話していない。
「本人のため」とかなんとか言いながら、
結局は親の都合(世間体や体裁)で、ものごとを進めているのである。
本当に子供のことを思うなら、親として痛手を被ることがあろうとも、
「罪を償いなさい」と言うことができるはずだ。
それが、子供の人間としての尊厳を守ることにもつながるのだし、
親として果たすべき、最低限の義務ではないか!!
遵法精神はもとより、倫理、道徳観念…
そういったものが、家族というコミュニティからも、
どんどん失われつつある。
精神保健の分野は、一般的に見れば、まだまだベールに包まれている。
しかしその一方で、調べようと思えば、
ネットや書籍から様々な情報を入手することができる。
子供に愛情のない親ほど、そのグレーな部分をついて、
精神科医療を利用しようとしている。
それが、ここ最近、俺が強く感じていることだ。
俺が分かっていることを、はっきり言っておく。
問題を起こしている子供たちは、親の真意を見抜いている。
自分たちの都合を優先して子供に正しいことを言い切らない、
親のそういう背中を、子供は間違いなく、見ている。
子供に「更生しろ」とか言う前に、親が魂を入れ替えろ!
そうしない限り、子供は悪事を繰り返し、永遠に親を脅しつづけるのだ。