参りました
ひとにはっきりと物を言うことは、
自分をさらけだすことだ。
だから、他人からはっきりと物を言われて、
あーでもない、こーでもないと返す奴ってのは、
自分をさらけだすのが嫌で、そうしているのである。
自分をさらけだすのが嫌なのは、自信がないからではない。
実は、「自分は相当すごい人間だ」という自負があるからだ。
根拠もなくそんな自信がもてるのは、
本当の苦労を知らないからだろう。
金がないとか仕事がないとか言いながら、
「自分へのご褒美」と言ってモノを買ったり、
美味いものを食べたり、旅行に行ったり……。
そんなことを、若いうちからやっちゃっている。
そうやって贅沢の味を知っているくせに、
カッコつけて斜に構えて、あーでもないこーでもない、
社会がおかしい、制度がおかしいと、文句ばかり言う。
おかしいのはアンタのほうじゃないか?
そんな人間ばっかり増えちゃって、
こわいわー、こわい世の中だわー。
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以上、新宿二丁目の飲み屋のママ(65歳)が、
俺に話してくれたことです。
子供のときから究極のマイノリティとして生きてきて、
親も故郷も捨てざるをえず、
本物の苦労をしてきたひとは、言うことが違うね。
お金だって持ってないわけじゃないのに、
ママの腕にはいつも、二千円くらいの安物の腕時計がはまってる。
「時間が分かればOKでしょ? 贅沢はきりがないからね」って。
参りました。