説得移送
今日は現場に出て、患者さんの説得移送を行った。
三年間、お風呂に入っていないという、
統合失調症の患者さんだった。
同居している家族や移送スタッフは、
消臭スプレーや芳香剤をまいたり、マスクをしたりしていたが、
俺は患者さんをリスペクトしているので、まったく気にならない。
患者さんに近づいて、目をしっかり見て説得をした。
時間はかかったが最後には、
入院治療を受けることに同意してくれた。
驚いたのは、医療機関の対応である。
守秘義務があるので結論だけ書くが、
到着して間もないうちにケースワーカーがやってきて、
4月からの精神保健福祉法改正を盾に、
「三ヶ月で退院してもらいます」と家族に言い放ったのだ。
家族は医師からの話もまだ聞いていなかったし、
このケースワーカーにしても、患者さんのこれまでの経緯など、
まだ何も把握できていないはずなのに……。
俺が、今日はまだ3月であることを訴え、
法改正に関する厚労省の指針について触れると、
ケースワーカーは、「そうですね~」とかなんとか言いながら、
俺の主張に反論はしなかった。
しかし一方で、『3ヶ月の入院を了承できないなら、受け入れは無理ですよ』
とでも言いたげな態度を取った。
法改正に関する知識のない、ただ困っている家族にとっては、
その態度は、まるで脅しのように感じられることだろう。
どの医療機関も、今後は病状に関係なく、
「入院は三ヶ月」で押し切るつもりだろうか。
調査せねばならない。