人間になりたい
俺には、仕事を通じて知り合って、
たまに飲みに誘ったりする間柄の若いひとが、何人かいる。
彼らは大きく2つのグループに大別できて、
一方は、将来有望な仕事のバリバリできる若い奴。
もう一方は、そうじゃない奴(笑)。
笑うのは失礼かもしれないが、
正直言って、その2つのグループにある格差は、
笑うしかないくらいに大きい。
まあ、俺からすると、本人に能力がないわけではなくて、
会社での役割にマッチしていないとか、
ちょっと不器用だったり素直すぎたりして、
上手くいっていないだけなんだけどな。
「そうじゃない」グループの奴は、
俺に向かって、たまにこんなことを言う。
「会社を辞めるので、
押川さんのもとで勉強させてもらえませんか」
そういう奴に限って、けっこう大手の会社に勤めていたりする。
俺には、大企業と同じような給料や保障は約束してやれない。
なんたって俺自身が、「その日暮らしの押川」だからな。
安定を手放してまで、俺から何を学ぼうと言うのか?
俺が尋ねると、彼らは判で押したように同じことを言う。
「人間になりたいんです」
深いセリフだな。
よくよく考えると意味が分からないが、
こころには響く。
先日もある若い奴にこのセリフを言われたのだが、
さあ、どうしようか……。