失敗を褒める
仕事上の失敗に対して、
上司から「よくやった」と言われた、
という話を聞いた。
これは、度量がなければ言えないセリフだ。
この上司は、成功ばかり続いている件に対しては、
「ヤラセでもやってんじゃないのか?」
と疑いを持っていたともいう。
やる気がない、同じ失敗を繰り返すなどは論外だが、
一生懸命やっていても、失敗することもある。
いや、むしろ失敗することのほうが多い。
俺だって、とくに若い頃は、失敗ばかり重ねてきた。
しかし子供時代を思い返してみて、俺が幸福だったなあと思うのは、
うちのお袋は、失敗を失敗と思っていなかった。
どんなでたらめをやってしまっても、
「いい経験したな」「勉強になったやろ」
と言って、笑って俺を見ていた。
それが、どんなことがあっても折れないこころを、
育ててくれたのではないかと、今更ながら思うのである。
反対に、子供のことで俺のところに相談にくる家族は、
超ちっぽけなこと(たとえば受験の失敗とか)も、
人生の失敗、敗北みたいにとらえて、
子供以上に落胆し、思い悩んでいることが多い。
むしろ、順風満帆で挫折も知らない……
そんな子供に、「失敗の一つや二つ、やってこい!」
そう教えることこそが、親の役目なのかもしれない。