資格とコンプレックス
いい大学を出たとか、資格を持っているとかそれだけで、
えらい上から目線で、他人を区別差別する奴がいる。
とくに俺みたいな “THE現場”って風体の人間には、
最初から疑いの眼差しを向けてくるし、
結論だけ言えばすむようなことも、こねくりまわして説明し、
こちらが少しでもミスを犯そうものなら、
鬼の首をとったみたいに騒ぎ立てる。
そういう対応をされたときに、俺が言う言葉は決まっている。
「そこまで分かっているなら、あんたが現場に出て全部やってくださいよ」
すると奴らは、小鳥さんみたいな顔になって、だまる。
なぜって彼らは自分のことを“先生”だと思っているから、
現場で命と体を張るようなことは、絶対にやりたくないのだ。
「そんなに“先生”扱いされたいなら、
政治家か、大学の教授にでもなってくださいよ」
ということも俺は言っちゃうんだけど、
そういう奴に限って、そこまでの努力はしない。
ただただ、自分の身の回りにいる人間、
仕事でちょっと関わりをもった人間に対して、
先生ぶって、「すごいですね」と言われたい。
あわよくばそれで金をもらいたい。
頭を下げたり、責任をとることはしたくない。
まいっちゃうぜ。
俺自身は、専修大学中退(笑)のめちゃくちゃな人間だけど、
なぜか若いときから、東大京大出身とか、
大企業のトップに立つようなひとにも、たくさん巡り会ってきた。
だから言えることだけど、本当の意味でひとの上に立つ人間は、
ひとを区別差別したり、先生ぶって話したりなんてしない。
むしろ俺みたいな人間に対しても、
「私には現場のことは分からないから、押川さん、
これからいろいろ教えてください」
なんて言って、リスペクトしてくれるんだぜ。
若かった頃は、そういうひとに出会うたびに、
これが真に物事を分かっている、仕事のできる大人の姿かと、
いたく感動したもんだよ。
俺はこのことについていろいろ考えた結果、
あることに思い至った。
コンプレックスの強い人間、あるいは、
小さい頃から勉強ばっかりしこしこ頑張ってきた人間、
そういう人間が、資格をとったりいい大学に行ったりすると、
それだけで、上から目線でひとを区別差別するようになる。
もとの器が小さすぎて、資格や経歴を使いこなせていないうえに、
自分は“先生”だ、なんて勘違いまでしちゃうから、手に負えない。
結局、年をとるごとに、その道の三流にすらなれず、
どっかに書いてあるような知識をひけらかして小銭を取ろうとする、
むしろタチの悪い人間になっていくのだ。
弁護士だって、仕事がなくてあぶれちゃっているようなこの時代だぜ?
資格があるってだけで、“先生”を気取っちゃう行為は、
見ているこっちが恥ずかしくなるから、やめてほしいね!