金がないない

金があるのに「ないない」と言い聞かせて子育てすると、

トンデモナイ子供ができあがる。

そうやって育てられて、すっかり歪んでしまった人間を、

俺は10人くらい知っている。

 

こいつらは大抵、親から「勉強しろ」「いい大学にいけ」

と強烈に言われて、あるいは空気で伝えられて育っているんだけど、

一方で「金がないから私立はだめだ」とか言われている。

結局、国立にいけなくて、奨学金で大学を卒業した奴もいる。

(もちろん自分で返済している)

 

こうして「金がないない」言って育てられた奴らは、

俺が知る限り、みんな「金」「金」言っているよ。

それも、自覚せずにそういう言動をとっている。

「自分は金が大好きだから、金儲けをしたいんです」

とハッキリ言って頑張るならまだ分かりやすいけど、

謙虚なふりして他人様に近づいて、「金」「金」やっている。

 

若いうちは、それで適当にやっていけても、

年とともに、人間らしさがプツッと切れて病気になったり、

詐欺まがいのことなど、本物の犯罪行為を始めたりする。

 

それに彼らは、とても簡単に嘘をつく。

仕事をしていないのに「やってます」、

ミスや失敗に対しては「やってません」、

人間性のおかしいところを指摘すると「違います」。

俺なんて最近は、この反応だけで

「こいつは、金ないないと言われて育ったな」

と、分かるようになった。

 

でも、彼らから親の仕事や生活ぶりを聞いてみると

「お前のところの親は、私立大学の三つ四つ、

行かせられるだけの蓄えはあるだろ!」

と言ってやりたくなるような生活を、しているんだよ。

 

ある奴なんて、家にお手伝いさんがいたって言うんだぜ。

それで「金がない」とか、「大学は国立」とか……。

他人の俺にだって意味が分からないんだから、

子供はもっと、ワケが分からないよな。

 

だったら「あんたに使う金はないから、高校出たら働け」とか、

親の“本音”を言ってやればよかったのにね。

善し悪しはともかく、本音で育てられたほうが、

子供は混乱せずにいられたんじゃないかと思うよ。

 

親は、金なんかあってもなくても「ある」くらいの気持ちで、

見栄の一つも張って、大学くらい行きたいところに行かせてやって、

悠々と構えておけよ、と俺は思うね。

そのほうが子供も、親の愛情を感じて頑張ろうと思うだろう。

 

金のあるなしを子供にガタガタ言ったところで、何か変わるか?

子供に対して、「節約しろ」って言いたいのか?

それとも「早く金を稼げるようになって、親を援助しろ」という意味なのか?

結局は、親の思うとおりに生きろっていうのと、同義語だよな。

 

それに俺は、金があるのに「ないない」言っている親って、

たとえば裏のある仕事をしているとか、

脱税みたいな犯罪行為をしているとか、

相当なやばいことをしているんじゃないだろうか…

ということにも、気づいてしまった。

 

実際、思いっきり脱税行為をしておきながら、

「うちは金がないから、節税しているんだ」

と、子供に説明していた親もいたんだよ。

 

そういう家庭から、究極の犯罪者が生まれるのではないだろうか。

俺は今、そんなふうに感じているのであるが、

この「金がないない」については、今後も引き続き、考察していきたい。