逆張り人生
思えば俺は、他人様の逆を張るということを、
常にやってきたように思う。
たとえば俺が大学生だったときは、バブルの絶頂期で、
周囲のほとんどが、「大企業に就職すれば、一生安泰だ」と信じ込んでいて、
だからみんな、学歴やら資格やらに固執していた。
俺が大学を中退して肉体労働から始めると決めたときには、
とっても冷ややかな目で見られたもんだよ。
ところが、あれから20年経ってみて、どうだろう。
今や「大企業だから安泰」とは言えない時代になってしまった。
資格を持っていても飯が食えない……
そういう奴は、俺の昔の知り合いにもたくさんいる。
仕事にしても、きれいで安全で体裁がよくて…
そういうところを目指すひとが多いが、ビジネスチャンスは結局、
ひとがやりたがらないこと、嫌がるところ、
「できるわけねーだろ」と言われちゃうことに転がっている。
移送の仕事も最初は、いろんなひとから、
「何、馬鹿なことをやろうとしているんだ」と言われたんだ。
でも俺は、無理と言われれば言われるほど、燃えた。
その感覚は、今も変わらないな。
10年くらい前、テレビに出してもらったり、
本を書かせてもらったりするようになると、
周りは俺に、品行方正を求めるようになった。
泥臭いやり方はもうやめたほうがいいとか、
大学に入り直して肩書きをつけたほうがいいとか、
そういうアドバイスをくれるひとが出てきたんだな。
多少はこころを動かされないこともなかったけど、
「やっぱり俺は現場だな!」と思って、そこでも逆を張ってきた。
おそらく多くのひとが、“ステップアップ”とは、
肩書きがついたり、金が増えたり、良い物を食べたり着たりできるようになること……
そういうものだと捉えているんだろうけど、
俺はそうは思わないんだよな。
いろんな現場に行き、真実を見て、
人間のなんたるかを突きつめて考え、答えを出していくこと。
その答えを、たとえば悩んでいる家族とか、
信頼できる誰かのために、役立てること。
それが、俺にとっての最上級のステップアップなんだな。
ストレートに階段を登り、体裁のいい場所に安穏としていては、
真実なんて見えないし、本当の答えにはたどり着けない。
本当のことを知りたいなら、逆張りで行くしかないんだよ。
俺は今後もますます、逆張り人生を行くつもりだぜ!