地道にいこう
俺の仕事、とくに精神保健分野の業務については、
“説得”が最大の山場のように思われがちだが、
実は“事前調査”にこそ、山場があると、俺は思っている。
とくに今は、精神科医療の状況ががらりと変わってしまい、
かつてのように、患者を説得して医療につなげればOKとはいかない。
たとえば入院先医療機関や施設の一つをとっても、
どんな医療機関(施設)で、どんな担当者(主治医やワーカー)がいるのか……、
情報をたくさん掴んだうえで、戦略を立て、相手と交渉する。
そういう頭の使い方が必要になってきた。
俺の場合、人に頼んで情報をもらうことも、もちろんあるが、
どちらかというと、現地に乗り込んでいって、
自分の目と耳で調査をするほうが、いいネタにぶちあたる。
俺はいつも同時進行でいろんな仕事を進めていて、
本業(精神科医療)はもちろん、ジャーナリストとしての案件、
新しい仕事の種まきや、他人様から頼まれて動いていることなど、
だいたい15~20個の案件を抱えているのだが、中身はバラバラである。
しかし不思議なもので、Aのことをやりながら、
BのこともCのことも……と並行してやっていると、
ある日、俺が知りたかったAの情報が、
まったく関係のないCの情報網からもたらされたりする。
地道にコツコツやっていると、いいことがあるんだなあ! と思う。
それにしても、近頃は医療機関や施設でも、拝金主義のところが増えてきた。
こういう「金」の匂いがプンプンするようなところは、調査のしがいがある。
ちょっと触れただけで、ぼろぼろと色んな弱点が出てくるし、
内部の弱肉強食関係まで浮き彫りになってくるからだ。
ここまで来ると、どのボタンを押せば、こちら優位に交渉が進められるか、
見極めるのはそう難しいことではない。
あとはアニマル押川が、ボタンをぽちっと押しに行くだけだ。