全部めくったときに何が出てくるか…②動物
さて、昨日の続きである。
俺の敬愛する二丁目のママは、今まで数多くのアル中、ヤク中をはじめとする、
いわゆる道を踏み外し、行き場を無くした人たちを助けてきた。
店で働かせてやり、立ち直れるよう厳しく、温かく接してきているのを、
俺も間近で見てきた。
しかし、ママは俺に断言する。
「今まで500人くらい面倒を見てきたけど、本当に立ち直れたのは二人だけだね」
二人のうちの一人は、昨日のブログに書いたF子だ。
今日は、F子と対照的に、ママに助けを請いながら、結局、
元の状態に戻ってしまったG子の話をする。
G子は、眠剤(睡眠薬)と酒におぼれ、心も身体もボロボロになっていた。
年齢は40代に差し掛かっており、ホステスとして雇ってくれる店も見つからない。
見かねたママが手を差し出したのだが、
ようやっと人並みの生活ができるようになると、G子は
「これだけ頑張っているんだから、結婚したい」と言うようになった。
まあ、結婚云々を望むのは自由だが、
眠剤と酒でボロボロになった40代の女を引き受ける男は、
そうそう見つかるものではない。
ママは、「相手がいればね」と答えるしかなかったし、
はたで見ていた俺も、「現実をみろよ」と、厳しいことを言った。
しかしG子は、店に来た自分好みの客にアプローチをするようになり、
ある一人の男性といい仲になった。
ところがその男性が、仕事の接待で女性を連れて来店したところ、
G子は嫉妬心をむき出しにし、男性に向かって大暴れをしてしまったのである。
プライベートと仕事をごちゃまぜにするなど、ホステスとしては落第点であるし、
ママの顔をつぶす行為でもある。
ママはそれでもG子を見限ったりはしなかったが、
G子はバツが悪くなったのか、メール一つで店を辞めてしまった。
ママは、G子が生活を立て直し、多少は貯金でもできるようにと十分な給料を渡していたが、
G子はその金を、自分を着飾ることや、部屋を飾ること……
ようするに男をひっかけ、連れ込むために全部、使ってしまっていた。
結局G子は、客と寝ることで指名をとるような、場末の飲み屋に移った。
そして未だに眠剤と酒に溺れ、
「ママや押川にどれだけ厳しいことを言われたか」と、
方々に悪口を言いふらしているそうだ。
同じ人間で、同じひとに、同じように助けてもらっても、
結果がこうも違うのである。
俺が思うに、F子とG子の大きな違いは、
「人間として生きようとしたか否か」、そこにあるのではないだろうか。
金の使い方一つ、去ったあとの姿一つ取ってみても、
G子は本能むき出しの、まるで動物ちゃんである。
そもそもママに助けを求めたのも、人として良く生きるためではなく、
あくまでも男をつかまえるため、だったのだ。
結果として、人間として生きてきたF子は、
仕事も旦那も、手に入れることができた。
反対に、男を求め、人間の心を忘れて生きてきたG子が今、
文字通り女を売って生きているのは、
なんとも哀しいが当然の結末であるとも言える。