俺が唸った! 名言 その5
「親が不良なんだね」
(歌舞伎町の伝説のホステス)
一昨日のブログにも登場したが、歌舞伎町の大箱クラブに、
S子という伝説のホステスがいた。
おそらく当時、歌舞伎町の飲み屋街で知らない者はいないだろうというくらい、
いろんな意味で有名なホステスだった。
出会ったのは20年以上前だ。
当時、若くして警備業を営んでいた俺は、
取引先の、俺より20も30も年上の社長たちと対等にビジネスがしたくて、
すべてにおいて背伸びをしていた。
高いスーツを着て、キンキラ金の腕時計をはめて、頭にはアイパーをかけ、
そして毎晩、新宿歌舞伎町の大箱クラブに通い詰めた。
S子はちょうど、今の俺くらいの年齢だったんじゃないかな。
ホステスとしてはトウが立ちまくりだが、
まだまだ現役バリバリで店に出ていて、
ずいぶん元気なおばちゃんだなと思ったよ。
向こうは向こうで、背伸びしまくりの俺を面白がり、かわいがってもくれた。
ホステスというと、綺麗に着飾って男に媚びを売って……というイメージがつきまとうが、
S子はむしろ、とても男らしかった(笑)。
店の女の子に執拗にいやらしいことをする親父の足を、ピンヒールで思い切り踏みつけたり、
チンピラまがいの振る舞いをする若い兄ちゃんの口に、割り箸を突っ込んだり、
武勇伝には事欠かない。
行動はめちゃくちゃなんだけど、
歌舞伎町というアウトサイダーの街で、体を張って生きてきただけあって、
ほんもののこころを持ったひとだった。
だからS子は、道を踏み外した若い奴の面倒をみたり、
俺が「本気塾」を設立したときにも、
「あたしにできることがあったら、何でも言ってよ!」と電話をくれたりした。
それで、俺が携わっている薬物依存症の女性を店に連れて行ったときに、
その女性を見るなりS子が言ったのが、冒頭の言葉だ。
実際、あとから発覚したことだが、
その女性の母親は、病気の父親をほったらかして浮気をし、
挙句の果てには、子供を使って父親から財産を奪おうと画策するなど、
不良も不良……、やくざの親玉みたいなもんだった。
俺も長いことこの仕事をやってきて、
子供の問題行動の根幹には、多かれ少なかれ親の育て方が関わっていると確信を持っている。
それにしても、「親が不良なんだね」というS子の言葉は、
まさに、それを的確にあらわしていて、恐れ入るのである。
職業が何であれ、現場で命張って、体張って生きてきたひとは、
頭の回転、言葉のチョイスが違う。
S子は年を追うごとにいいおばちゃんになってゆき、
子供にサッカーを教えたり、相変わらずひと助けをしたりしながら
今も歌舞伎町の片隅で生きていると聞く。
ホステスからは足を洗ったようで、俺ももうめったに会うこともないが、
何かあると「たけちゃん、大丈夫?」とメールをくれたりして、
町内会のおばちゃんみたいなんである。