交通整理
問題行動を起こす子供を抱える家族が、第一に考えるべきことは、子供の状態が
「病気として治療すべきなのか、
犯罪として立件(更生)させるべきなのか」
どちらにあるのか、ということだ。
最近は特に、この境界線をめちゃくちゃにしている家族が多い。
たとえば、統合失調症の症状(妄想、幻視、幻聴)が理由で暴れているなら、
精神科医療につなげて、病気の治療をすべきである。
進んで精神科病院に入院したい人なんて、めったにいないのだから、
本人が治療を拒むのは当然のことだ。
そこは家族が頑張るなり、保健所や精神保健福祉センター、
場合によっては業者に頼むなりしてでも、乗り越えなければならない。
ところが家族は、本人が拒んでいることを理由に、医療につなげることを放棄し、
困ったことがあると、「暴れている」「おかしなことを言う」と警察に通報や相談に行っている。
警察が措置入院の対応をとってくれる(第23条通報)こともあるが、
本人がよほどの状態にある場合に限られるし、
警察にできるのは通報までで、その後の判断は保健所と精神保健指定医に任される。
だからこそ、そうなる前に、家族は医療につなげる努力をすべきなのだ。
逆に、違法薬物を現在進行形でやりまくっている子供を、
病気だからと、医療につなげたがる親がいる。
もちろん、依存症を克服するために精神科医療を利用する必要はあるが、
現行でバリバリ違法薬物をやっているなら、
紛れもない犯罪行為であり、警察に通報すべきである。
薬物の後遺症と、統合失調症の症状(妄想、幻視、幻聴)は似ている。
だから時々、薬物依存症なのに「統合失調症」の診断名がついている人もいる。
でも俺からすると、本人をよく見て話を聞いていれば、
薬物か病気かは、だいたい分かるはずである。
薬物依存症に統合失調症と診断名をつけて、
向精神薬をばんばん出すような医者は、はっきり言ってヤブ医者、
もっと言えば詐欺じゃねーか、とすら思う案件もある。
でも、その診断名を望む親もいるんだよな……。
今のご時世、薬物依存症より統合失調症のほうが、
体裁とコンプライアンス上都合が良かったりするからな。
俺は、依頼に来た家族には
「子供の犯罪行為が発覚したら、110番通報しますよ」
と宣言しているのだが、これに躊躇する親は、けっこう多い。
むしろ「金は払うんだから、うまいことごまかして病院に連れて行ってくれればいいのに」
と思っているような親も少なくない。
俺を利用して、逮捕をまぬがれようとされても困るぜ。
あるいは、統合失調症の病名がついていれば、
事故や事件を起こしたときに、何かと有利になると思っている親もいる。
子供がいずれ警察沙汰を起こすことが前提ってわけだ。
でもそれって、本当に子供のためになんのか!?
前にも書いたけど、俺の大好きな『探偵物語』の工藤俊作のセリフ。
俺の信念でもあるので、もう一回、引用しておくぜ。
――――――――――――
「あのね、私は主義として理屈が通って法律に触れなければ、
(仕事は)大体引き受けるんですけどね。
あと相手が信用できるかっちゅうかね」。
――――――――――――
俺の仕事は、そうやって病気と犯罪をごちゃまぜにして、
見当違いの方向に走っている家族を、
正しい方向に交通整理しているに過ぎないんだな。
なんだ! ガードマンのときと、本質は変わらねーな。
よろしく頼んだよ!