持ちつ持たれつお互い様
「ひとに迷惑かけたくない」と、たいていのひとが思っているだろうが、
しかし、生きていれば、迷惑をかけたり、かけられたりの連続である。
もちろん法を犯したり、むやみやたらに傷つけたり、というのは論外だが、
仕事だって、一生懸命やっていてもミスをすることはある。
そんなつもりなくても、誰かに迷惑をかけることなんて、たくさんある。
家族、友達、恋人同士の仲にしたって、
厄介事に巻き込んでしまって、ケツふいてもらうようなことも、あるだろう。
だいたい哀しいかな、どんなに立派に、スマートに人生を送ったとしても、
人生最後のあと始末は、ひと様にしていただくしか、ないのである。
たとえば俺は、死後の世界とか興味がないので、
「死んじゃったら全部、かんけーねー!」と思っている。
そのぶん生きている間は、辛いこともきついこともめいっぱい、
できることをやっちゃろー! とも思っている。
しかしそんな俺も、死んだあとの始末ばかりは、自分ではできない。
葬式なんかはせんでもいいが、死体を放置しておくわけにはいかないからな。
それを考えると、「ひとに迷惑かけたくない」なんて頑なに思うのは、
見栄の一種であり、高慢さや自己中心的な考えを、はらんでいるともいえるし、
とてつもない孤独の裏返しでもあると思う。
なぜそんなことを思ったのかというと、
先日、ある弁護士の先生と話していたときに、
「詐欺師や詐欺商売が食い込む三要件」を教えてもらったのだ。
・孤独(「寂しい」とよく言う)
・なんでも人に頼む(依存心が強い)
・金を持っている
とくに高齢になって、この三要件に当てはまるひとほど
「家族には迷惑かけられないから」「自分が死ぬ前にちゃんとしておかなきゃ」
などと言って、簡単に他人(業者)を信頼し、
大金を払っていろんな契約をしたり、全部丸投げで任せてしまったりする。
高齢者をターゲットにする詐欺的商売は、昔からあったけれど、
最近めっきり増加している背景には、
この「ひとに迷惑かけたくない」という気持ちを、
うまいこと利用されている、ということがあるのではないだろうか。
だけど現実には、本人が亡くなってはじめて、
お金がすっかりなくなっていることが発覚したり、
ワケのわからん契約が山ほど出てきたりと、
家族や子供がとんでもない「迷惑」をこうむる事態になっているのだ。
周囲のひとと、持ちつ持たれつ、「お互い様」の精神を大切にしていれば、
困ったときには頼ることもできようし、
人生最後のあと始末を、よく知りもしない業者に任せるなんてことには、ならないはずだ。
そして、この「お互い様」の輪を広げるためには、
自分がまず、ひと様の苦難を一緒にかぶることだ!