発達障害の相談増加
テレビ放映の影響もあり、問い合わせをたくさんいただている。
その中で、ある相談者の方が、
「(行政機関の)発達障害支援センターは、電話もつながりにくく、
面談の予約もいっぱいで、なかなか相談に乗ってもらえない。
困り切って、こちら(トキワ精神保健事務所)に電話した」
と、言っていた。
「子供が発達障害と診断された」という相談は、
俺も最近、よく耳にするようになった。
しかし中には、本当に病気だろうか? と思ってしまうケースもある。
特に未成年に対しては、家出や深夜徘徊など逸脱した言動、違法行為の繰り返しなど、
かつてなら非行少年と呼ばれていたような類の問題に、
「発達障害」(あるいは「発達障害の疑いあり」)という診断名がついているケースが、とても多い。
本来は、親子関係や家庭環境の見直しが必要なのに、それをおろそかにし、
とりあえず発達障害と病名をつけ、安心しているだけのように見えることもある。
実際にそういうケースほど、検査だけで終わっていて医療にかかっていなかったり、
相談機関との連携がとれていなかったりと、
病名はついていても、病状の改善や根本的な問題解決には至っていない。
実は、発達障害という病名がよく聞かれるようになる前(10年ほど前)のことで言えば、
妄想や幻覚など明らかな精神疾患の症状はないが、
家族の理解を超えるような言動(家庭内暴力、思考の偏り、こだわりの強さなど)があるという、
つまり対応の難しいケースに対して、やたらと「不安神経症」、「社会不安障害」、
「適応障害」、「パニック障害」という病名がつけられていた時期があったのだ。
今はそれが、「発達障害」にすり替わっただけのような気がする。
言葉は悪いが、病名にも一種の「流行」があることを、感じてしまう。
結果今では、発達障害の患者が爆発的に増えているのだろう。
そのため行政も、全国各地に発達障害者支援センターを置き、対応をとっている。
医師・保健師・作業療法士・精神保健福祉士・ケースワーカー・臨床心理士等、
資格を有した専門家が相談に応じてくれるという。
ただし、国の補助はあるが、実施は各自治体にゆだねられているため、
中には、具体的な運営を社会福祉法人や社会福祉事業団に委託している自治体もある。
支援の内容も、おそらく自治体ごとにばらつきがあるだろうし、
対象を18歳未満の児童に限っているセンターもある。
結果として、「発達障害支援センターは、電話もつながりにくく、
面談の予約もいっぱいで、なかなか相談に乗ってもらえない」という事態に陥っている。
これは、人員を増やすなどして、早急に改善すべきではないだろうか。
発達障害に限ったことではないが、
診断名だけつけられて、医療につながることもできず、
相談する先もないと嘆く家族は、少なくないのだから。
また、家族や周囲の大人たちも、病名をつけることに執心するのではなく、
本人の生育環境や親子関係・人間関係の見直しなど、
根本的なことにも真摯に向き合うべきだと、俺はこころの底から思っている。