They Dance Alone

以前のブログにも書いたことだが、二週間ほど前に、

俺が携わっていた患者さんが急に亡くなってしまった。

 

彼は入院中の身だったので、持ち物もそんなになかったのだが、

俺は遺品として、彼が聞いていたCDをもらってきた。

NYに行く前は、ずっとそのCDばかりを聞いていた。

 

その中に、スティングのベストアルバムがあった。

スティングは俺も昔から好きで、けっこう聞いてきたのだが

やはり今回ばかりは故人のことが思い出されて、まったく別の趣があった。

 

とりわけ、俺の頭から離れなかったのがこの曲。

 

 

これはスティングが、チリの元大統領ピノチェトの行った虐殺を批難した曲で、

歌詞にこめられた意味は、政治色の強いものだ。

 

しかし俺にとっては、ところどころのフレーズが故人を思わせ、

彼の人生をしみじみと振り返ってしまった。

 

社会的な成功をおさめる家族や親族の中で、彼だけが道をはずれ、

はずれたまま元に戻ることができなかった。

 

家族に認められたいと思う反面、やることなすことがトラブルを巻き起こした。

結果、断絶を決めた家族に対して、彼自身は最後までつながりを求め、あがいていた。

その姿はまさに、「They Dance Alone」である。

 

さみしかっただろうなあ! と思う。

 

今の俺にできることは、こうして故人の好きだった音楽を聴き、偲ぶことだけだ。