真実をねじ曲げることなどできないのだ!
俺は本気塾で、違法行為を行ってきた人間の更生に携わっているのだが、
どんなに周りが一生懸命になって、その人間を立ち直らせようと頑張ったところで、
最後はやはり、本人の“こころ”にかかっていることは言うまでもない。
いつまでたっても自らの行為を省みない、
被害者や迷惑をかけた相手に対して、謝罪も償いもない。
そんな人間は、周囲がいくらフォローをしようとも、同じことを繰り返す。
そうなったときには、もはや俺なんかの手には及ばず、
警察介入のうえ、司法で裁かれる以外に道はない。
ずいぶん前になるが、俺はちょっとした顔見知りの女性から、ある相談を受けた。
それは、俺も知っているAという人間から、
暴行やわいせつの被害を受けた、という相談だった。
酒の席だったこともあり、その場ではうやむやに済ませてしまったが、
酔いが醒めてみると、女性の身体には怪我も負っていた。
しかもその後、Aから強姦未遂や、ストーカー行為をされた、
と証言する女性が複数、あらわれたのである。
相談を受けた俺は彼女たちに、
診断書をとって警察に被害届を出すように勧めた。
たしかにAとは親しい間柄だったが、
だからと言って犯罪行為を見逃すわけにはいかない。
性犯罪は親告罪だが、被害者が被害届を出すにも勇気を要する。
しかしAは、表面的な言い訳や屁理屈で、
女性たちだけでなく、周囲の人間をも丸め込んだ。
結局、女性たちは事件を公にすることを拒むようになり、
うやむやのまま、終わってしまった。
俺はその事件を機に、Aとは距離を置いたが、
一方で、短くない年数をAと付き合ってきて、どこかに、
「これを機に、改めてほしい」という気持ちもあった。
しかし結局、人間の本質というものは、そうそう変わらない。
たやすくルールを破る(=法を逸脱する)ことのできる人間、
そして過去を省みず、謝罪や償いも全くないような人間は、
どこまでいっても同じことを繰り返す。
時が流れて最近、俺は再び、
Aの本質を見せつけられるようなトラブルに巻き込まれた。
本人は「そんなつもりはない」と言うだろうが、
ルールを逸脱した生き方をしていることも、
女性に偽りを語り、自分に都合のいいよう表面的に繕っているという点も、
昔とまったく同じである。
日本には、どうしても「ナアナア」で済ませようとする考え方がある。
とくに、有名大学を出た、大手企業に勤めている、金を持っている……
そんな表面的なものにすぐに惑わされ、
相手に高い価値を置き、及び腰になってしまう。
悪い奴ほどそのカラクリが分かっているから、
自分が正義のような顔をして屁理屈をこね、
正しいことを言う人間を、排除しようとする。
だけど、「事実」=「そいつがやってきたこと」を並べてみたときには、
法を逸脱した足跡が、明確に残っている。
被害者のいる案件ならば、なおさらだ。
暴力や強姦を受けた女性の手元には、未だ当時の診断書が残されている。
Aのこれ以上の暴走をとめるためには、
過去の件もきっちりと警察に介入してもらって
司法で裁いてもらうしかないのだろう。
刑法の改正により殺人や強盗殺人の時効がなくなったように、
その他の事案についても、公訴時効というものがある。
とくに性犯罪に関しては、親告罪の告訴期間が廃止され、
控訴期間の範囲で告訴できるようになった。
(準強制わいせつ罪7年、準強姦罪7年、強姦罪10年)
そうでもしない限り、Aが己を省みることなどないだろうし、
今まで被害に遭ってきた女性たちが、浮かばれない。
今後は、俺のできる最大限のことをやり、
過去の件も含めて、きっちりとカタをつけさせてもらうつもりだ。
真実をねじ曲げることなどできないのだから。