おしゃれな感じにはなりたくねーな!
おそらくどの業界も同じではないかと思うのだが、
精神保健の分野でも、行政機関の相談先が細分化されている。
精神保健にまつわる問題を抱える家族が、行政の相談先として思い浮かぶのは、
保健所(精神保健福祉センター)だと思うのだが、内容によっては、
そこからさらに「〇〇センターに行って下さい」とふられる。
その「〇〇センター」ってのも、新設や名称変更を繰り返していて、
地域によっても呼び名が違ったりするから、
この道約二十年の俺でも、だんだんワケが分からなくなってくる。
もしかしたら、当該主管行政機関である保健所も、
理解がおいついていないのではないか? と思うことさえある。
なぜなら、うちに相談の電話をかけてくる家族の中には、
どう考えても、うちみたいな民間企業(有料)を利用するより、まずは行政の、
それこそ「〇〇センター」みたいなところに相談したほうがいいケースがあるのだが、
それを家族に伝えると、
「そんなところがあるんですか? 保健所では何も言われなかったから……」
などと言う。
もっとひどいのは、保健所が自宅訪問も何もしないうちから、家族に、
俺のところ(トキワ精神保健事務所)に相談に行くように、促しているのだ!
家族もワケが分からないまま、
「こういう業者があるからと、トキワさんを紹介されました」
とか言って、うちに電話をかけてくる。
ふざけんじゃねー! と言いたくもなる。
うちは、保健所(厚労省)の下請け会社ではない!
話が少々逸れたが、名称の変更という点では、
職員につく名称(肩書き)も同じだ。
俺がこの仕事を始めたばかりの頃は、保健所の職員や精神科病院の職員など、
現場で相談にのってくれるひとのことは、すべてひっくるめて
「ケースワーカー」と呼んでいたような気がするのだが、
今は、ソーシャルワーカー(SW)という大きなくくりの中に、
ケースワーカー(CW)がいて、メディカルソーシャルワーカー(MSW)がいて、
精神科の相談担当者は精神保健福祉士(国家資格の有資格者)で……と、とにかく細かいのだ!!
しかし、それらのセンターにしても、肩書きにしても、
現場で、当事者である患者や家族に浸透しているかというと、そうでもない。
俺も頭が悪いので、現場でガンガン仕事をしているときはつい、
昔の名称で呼んでしまって、あとでうちのスタッフから
「あれは〇〇に変わりました」「あの方の肩書きは〇〇です」と、逐一、訂正される。
なんだかな……と思う。
だって名称や肩書きがおしゃれになって、
たしかに、格があがったような感じはするけど、
実際には、解決されていない問題が山盛りあるのだ。
それも難しい最難関の問題ほど、取り残されている。
とくにこの分野は。
人間ってのは、おしゃれな名称や肩書きがつくと、
汗をかいたり、我慢をしたり、嫌なことでも頑張ったり、
そういう人間としての本分を、忘れるようにできているのではないだろうか。
そう考えると、俺はやっぱり、おしゃれな肩書きとかはいらねーし、
いつまでも泥臭く、身体を張って、やっていきたいなと思う。
まあ、そのおかげで最近は、爆弾みたいな問題を抱えた家族から
「押川さんて、サンドウィッチマンの伊達に似てますね」とか
「相談に来る前は、怪しいひとだと思っていました」とか
「とりあえず、押川さんを信用します」とか、
エッライ軽いことを言われちゃってんだけどな!!
それでも頑張っていこうと思う、今日この頃だ。