超コンパクトな生活

俺はこう見えて整理整頓が得意なので、

書類なんかも何ヶ月かに一度はきちんと見直して、

不要になったものはガバッと捨ててしまう。

 

プライベートの時間はないに等しいので、

ムダな買い物はあまりしないし、

ついつい買って増やしてしまうのは、本くらいだ。

 

それでも周りを見渡してみると、俺の生活はモノに囲まれている。

この中で、俺が絶対に手放せないモノってなんだろう?

と考えてみると、まだまだムダなモノがあふれていると感じる。

 

この間、読んだ本にも書いてあったんだけど、

人間の持てる分量は決まっていて、それがすでに一杯のときには、

新しいモノは入ってこないと言うんだな。

 

これは、単純なモノに限ったことではなく、

人間関係や生き様に関係する話である。

 

「本気塾」で携わってきた若い奴らを見ていても、そう思う。

 

俺が彼らに関わるとき、まずは本人に一切を捨てさせる。

というか、だいたい彼らは究極にヤバい状態で俺のところに来るので、

今の環境から逃げるしかなく、いろんな物を捨てざるをえないのだ。

 

皆、うちに来るときはカバン一個で、

それまでに住んでいた住まいや持ち物も全部処分してくる。

携帯は解約し、友人や恋人、親とも一切、連絡をとらない。

 

大手企業を辞め、肩書きを捨ててきた奴もいるし、

男に買わせた高級マンションを手放してきた奴もいる。

 

最初は、文句や恨み言を言う。

とくに女性は、しばらくは「彼氏のことが忘れられない……」とか

「あの服はブランド物で高かったのに……」とか、めそめそしている。

 

でも自立への道を歩むうちに、何も言わなくなる。

それは本人たちが、真実に気づくからだ。

友人や恋人が、しょせんは違法行為を共有する相手でしかなかったこと、

どんなに高いブランド物も高級マンションも、

本当の意味で自分を助けたり生かしたりするものではなかったこと……。

 

それが理解できる頃には、人間らしい顔つきを取り戻し、

身の丈にあった新しい目標なども見えてくる。

 

すべてを捨てるというのは、文字で書くほど簡単ではない。

シンプルをこころがける俺だって、全部捨てられるか?と聞かれたら、

「いや、でもあれとあれだけは……」などと、考えてしまう。

 

でも俺の生活なんて、ほとんど仕事だけでまわっていて、

とくにこの一、二年は、いろんな意味で勝負の年だという感覚がある。

究極、俺が仕事をするのに必要なものだけが、身の回りにあればいいのだ。

 

人生の間には、知らず知らずにモノを増やしていたり、

何かを収集することに熱中したり、そういう時期もあるだろう。

でもどこかでリセットする機会ももたないと、

新しい物事に出会えるチャンスを、失ってしまう。

 

この国で生きる以上、経済破綻や大きな地震で、ある日突然、

生活基盤を失うことだって、十分にありえる。

 

だから俺は最近、生活スタイルをより一層コンパクトにして

生きていきたいなあと思っているのだ。