ぼったくりはどっちじゃ!
身体は一つしかないので、仕事は選ばなければならない。
そうこころに決めているのだが、ときどき
とんでもない仕事(家族)にひっかかってしまうことがある。
きちんと契約を結ぶ気も、代金を払う覚悟もないのに
さもその意思があるかのような顔をして「お願いします」とやってくる。
こちらが動かざるをえないような緊急の案件を
「困った、困った」と言いながら持ってくるから、
話を聞いてしまった以上、対応をとらざるをえなくなる。
そうやって他人を巻き込んでおいて、いざ契約の段になると、
「まとまったお金がない」「すぐには用意できない」などと言い出す。
これではビジネスにならないのだから、
さっさと撤退すべきなのは俺もよく分かっているのだが、
いかんせん、俺の扱っている分野は「人間」のことである。
しかもそういうケースほど、命に関わるような問題を抱えており、
うまい落としどころが見つかるまでは、
はいサヨウナラ、というわけにはいかない。
まいったなあと思いながら、ずるずる対応する羽目になる。
勝負で言えば、負け続きだ。
こういう負け仕事がもっとも、俺にストレスを与えるし、
魂が削り取られるような気すらする。
たまたま俺の活動に同行していたテレビ局のディレクターが、
その相手に、「どうして押川さんに正式に依頼して、
お金を払わないのですか?」と尋ねた。するとこう答えたそうだ。
「だって、ぼったくられそうじゃないですか」
俺はものすごく腹が立った!!
俺がここまで動いてきたのは、相手が
「自分たちではとてもできないことをしてもらっているのは、
分かっています。タダで利用することはしません」と言い続け、
「このままでは家庭が崩壊する」と泣きついてきたからだ。
こういうひとたちほど、弱者のフリがうまい。
詳細を知らない第三者が見たときには、
「押川のほうがおかしい」「助けてやればいいじゃないか」
などと思ってしまうような立ち振る舞いを、完璧にとる。
はっきり言うておくぞ。
「ぼったくりはお前のほうじゃ!!」