ブルーorホワイト
ちょっと前に、学生時代の同級生と会ったのだが、
そいつは車を修理する仕事に就いている。
と言ってもディーラーのような感じではなく、
ある業種で使われている車の、点検整備の仕事だ。
つまり毎日毎日、同じかたちの車をみている。
おかげで彼の親指は、一部が変形していた。
その車の、とある部分にぱちっとはまるように、
指が変形してしまっていたのだ!!
なおかつ指先は硬くなり、爪も真っ黒に黒ずんでいた。
俺はびっくりすると同時に、感動した。
これが、プロの仕事、プロの指だ! と思った。
「お前の指、プロ野球で言ったら四番バッターものやなあ!」
俺がそう褒めると、彼はとっても照れくさそうに笑った。
彼の職種が、ホワイトカラー(知的労働)かブルーカラー(肉体労働)かと問われれば、
間違いなく、ブルーカラーと言われるだろう。
俺の世代は、学生時代に皆がホワイトカラーを目指し、
暗記を頑張って、いい大学に進んだ。
好景気の波に乗って、ホワイトカラー系の企業にも就職し、
ブルーカラーを鼻で笑うような生き方をしてきた。
そういう中で、俺はあえてブルーカラー(警備業)の仕事を選んだ。
今の本業も、えらそうなことをブログに書いたりはしているが、
基本は現場仕事、肉体労働だと思っている。
俺は若い頃、周りが競ってホワイトカラーになりたがるのを見て、
いつか飽和状態になる時代が来る、と悟った。
当時、ブルーカラーの仕事は先細りだったからこそ、
俺みたいな人間にもチャンスがあるだろうし、
何十年かしたら、また大きな波がくるんじゃないか、とも思った。
そして俺が思ったとおり、今やホワイトカラーは飽和状態で、
よっぽどスペシャルな頭脳をもつか、とてつもないアイデアがあるか、
そういう人間じゃない限り、簡単にクビを切られるし、
組織にいられたとしても、「ろくでもない」の烙印を押されて終わりだ。
ホワイトカラーの本質を言えば、
頭脳だけで、国を良くする、会社を良くする仕事だからな。
肉体労働と違って、「そろそろ身体がきつくて…」という言い訳もきかないわけだし。
だから俺は、「ホワイトカラーを目指す=ものすごい高みを目指す」ことであり、
そこには、立派な志があってしかるべきだ、とも思っている。
「ブルーカラーなんてとんでもない! ホワイトカラーを目指せ!」
我が子に対してその価値観を押しつける親は、未だにたくさんいるが、
けっこう恐ろしいことを言っているという自覚をもったほうがいい。
ホワイト組の過酷な競争を勝ち抜くためには、
高い「志」はもちろん、精神力や胆力、忍耐力が必要なのだ。
それがなければ、小さな挫折で簡単に、こころが折れてしまうだろう。
しかし、「志」はともかく、精神力や胆力、忍耐力というのは、
実は肉体労働をやることでこそ、ついてくるものなのだ。
中途半端なホワイト上がりの親ほど、この本質に気づかない。
だから、勉強ばっかりさせるようなことをして、
子供をぶっ壊してしまうことになるのである。