言い訳をしない

ガードマンをやっていた頃には、現場での事故をいくつも、目撃した。

大事故にはならなかった例もあれば、死者の出る事故もあった。

 

さっきまで普通に話をしていたひとが、次の瞬間に命を落とす。

その瞬間を目の当たりにしたこともある。

 

最初から軽い気持ちで仕事をやっているような輩は言語道断だが

真面目にやっていても、人間だからこそ、

眠いなあとか疲れたなあとか腹減ったなあとか、

気持ちがゆるむことがある。

 

当たり前だが、そのようなときほど、事故が起きやすい。

 

反対に、事故のない現場では、現場の安全対策はもちろんだが

気のゆるんだ人間を見逃さず、とっさの注意をしてくれる

優秀な現場監督、ベテランの作業員がいた。

 

彼らの注意は、注意指導と言うよりは

「コラ!!」「シャキッとしろ!!」「死にてーのか!!」

というような怒声に近いものだったが、

命がかかっているからこそ、それが正しいと思う。

 

言われたほうも、命を助けてもらったのだから、

「すみません、ありがとうございました」のひと言でいい。

 

そこに、説明や言い訳がいるだろうか?

 

今は何をするにも、丁寧な説明、丁寧な言葉遣いが求められる。

説明が足りなかったり、いきなり叱ったりしようものなら、

すぐに、パワハラだ、モラハラだと騒ぎ立てられてしまう。

 

時代の流れだから仕方ないのかもしれないが、

仕事をするうえでの「現場感覚」が、

どんどん失われているように思えてならない。

 

これも、学歴至上主義の弊害なのかもしれない。

 

俺のところには、道を踏み外した若い奴が助けを求めてくるが、

もともとは高学歴の持ち主という人間が多い。

 

人生勉強の一つとして、俺の仕事を手伝わせてみると、

高学歴の人間に限って、何かにつけて言い訳ばかりする。

 

自分のやるべきことを出来たのか、出来なかったのか、

二択で言えば「出来なかった」という結果が出ているのに

こちらがそのことに対して注意をすると、

まるでやったかのような口ぶりで言い訳を始めるのだ。

 

その言い訳は、俺からしてみれば、否定や拒絶と同じである。

俺の言ったことも、己の仕事に対しても

否定し、拒絶しているようにしか、見えない。

 

出来なかったことを責めたいのではない。

若いうちはとくに、失敗してなんぼ、とも思っている。

 

だが、失敗に対してモタモタ言い訳しているようでは、

それだけ、軌道修正のスタートが遅れる。

現場では、それこそが命取りになる。

 

失敗を瞬時に受け入れられる素直さこそが、

未来の可能性を生むのではないかと、この頃は思うのだ。