家族にしがみつく子供
俺は日頃、自分の家族・親族の存在をほとんど忘れているので
何か困ったことが起きても、身内の顔を思い出すようなことはない。
ガキのときから、母親には、
「好きに生きろ、ただし自分のケツは自分でふけよ」
というふうに言われて育った。
というわけで思春期の頃には、親に向かって
「なんだ、このクソばばあ!!」と言ってはばからなかったし、
また、そんな俺に、余裕たっぷりの笑顔を返してくるような親だったので、
非常にスッキリサッパリ、育ててもらった。
親孝行なんてしたこともないし、
向こうもしてほしいなんて思っていないだろう。
その分、互いに心配とか不安とかいうような、
マイナスの感情を抱くこともない。
よって、日頃は、その存在もきれいサッパリ忘れている。
これは、非常に心の健康に良い生き方であると思うので、
その点は親に感謝している。
俺のクライアントになるような
問題を抱える子供(といっても30代とか40代)は、
なにかといえば「親」「家族」と言い出す。
親からは、すでに見捨てられているにもかかわらず、である。
俺からすると、本音は「金くれよ、面倒みてくれよ」って話だろ、と思うのだが、
彼らは「家族に対して愛情があるから」「親を信頼しているから」などと言う。
そのような表面的なごまかし方を教えたのも、
そもそも、家族にしがみつくような子供にしてしまったのも
まぎれもなく、親の育て方に原因があると、俺は思っている。
こうなってしまう子供の親ほど、
子育ての段階においては、子供にしがみつきまくってきているのだ。
自分の思い通り、望みどおりに育ってほしいと、
意識的・無意識的にかかわらず、強要している。
だから、うちのクライアントになる子供は、
思春期に反抗期がなかった、ということが少なくない。
親は、自分の価値観でしか子供を見ようとせず、
そのフレームの中に子供を押し込めている。
そして子供はそれに応え、親の考えるフレームに、
きちっと収まっているから、反抗期もないのだ。
ただし、社会に出る時期が来ても子供は、
そのフレームから出ようとしない(出ることができない)。
やがて問題は肥大化し、
暴力や金の無心など、いろいろあるが
家族では手がつけられない状態になる。
フレームがぶっ壊れてはじめて、
家族は大慌てで俺のところに相談に来る。
しかし、そこまで“仕上がって”しまった子供たちに、
親と距離をもて、ということを理解させるのは、とても難しい。
子供に無条件で愛情を注ぎまくるのは
三歳までで十分じゃないかと思う。
あとは「獅子の子落とし」じゃないけれど、
子供を外の世界に放り出し、社会に揉まれて育つような生き方を
早いうちから身につけさせるしかないのだ。