余裕
子供を育てるということは、どこかに余裕がないと、
なかなか難しいものなのかもしれない。
経済面での余裕は、もっとも分かりやすい例だろう。
あるいは金がなくても、夫婦間で愛情があるような親は
互いに支え合える分、やはり余裕があると言える。
子供のために使える時間があるなど、生活スタイルの余裕もその一つだ。
俺が携わるのは、病気もしかり犯罪もしかり
いわゆる一般的な道からは外れてしまった子供ばかりであるが、
その中でも、上述したような余裕のある中で育てられた子供は、
やっぱり、余裕があるのである。
動作や話し方にもガツガツ、ガサガサした感じがないから、
たとえば医療機関や施設に入院(入所)した際にも、
職員から好かれ、よく面倒をみてもらえる。
言っていること、やっていることはめちゃくちゃなのだが、
どこか笑えるところがあるのも、共通している。
反対に、余裕がまったくない中で育てられた子供は
どこまでいってもガツガツ、ガサガサしている。
他人にも平気で焦燥感やダイレクトな欲求をぶつけるし、
笑えないことばかり、する。
そのような人間に真剣に関わってくれるひとは、滅多にいない。
最近の若い世代の夫婦には、
「子供は欲しいけど、産んだら余裕がなくなるから、諦める」
という選択をする夫婦も増えていると聞く。
少子化対策の流れに逆行するようだが、
これも選択肢の一つとしてアリではないかと、俺は思う。
とはいえ、金がないなら子供を産むなとか
シングルファーザーやマザーには親の資格がないとか
そんなことを言いたいのではない。
子育て支援のために税金が使われることに異論はないし、
衣食住や子供の教育を護るために、
いっそうの福祉制度の充実が計られるべきだと思う。
ただ、大切なことは、親になった以上は、
「こころ」の余裕を失わない努力をするべきってことだ。
手持ちのモノは少なくても、
知恵をはたらかせる、知識をふやす、創意工夫の努力をする。
それによって、足りないところを埋め、
マイナスをプラスに変えることはできるはずだ。
そういう少しの努力すらせずに、困っている事実だけを振りかざし、
最初から最後まで、他人に丸投げしようとする親が増えた。
しかもそれを、「金がないんだから、忙しいんだから、シングルなんだから、
しょうがないじゃないか!」と正当化している。
反対に、金や愛情や時間が山盛りあっても、
「もっともっと」と上ばかりみているような親もいる。
とくに金に関しては、持っているくせに子供に対しては
やたらと「ないない」と言ってきかせ、締め上げて育てている親もいる。
親自身が、こころに余裕がない生き方をしているのだ。
こうして育てられた子供は、金やら異性やらに執着して、
根拠のない上昇志向のもと、ガツガツギスギスしている場合が多い。
親たるもの、いろんなモノがあったりなかったりしても、
常に「こころ」だけは余裕をかまして生きていく。
そのくらいのタフさを持っていないと、
子供はまともに育たねー! ってことだな。