自分か他人か

俺の年代はとくに

「自分が良くなることを考えるのが一番、楽しい!」

と思って生きている人間が、ホントに多い。

 

そういう奴に限って、表面的な人当たりの良さだけは身につけているんだけど

うっかり信用なんかすると、どこかで必ず梯子をはずされる。

 

「自分さえよけりゃいい」と思っているのだろうが、

そんなんで生きていて楽しいのかな? と俺は思っちゃうね。

 

だって、それでどんなにいい思いができたところで

掛け算にはならないじゃん。

 

俺は23歳で警備会社を興したとき、金もコネもない、

学歴や顔がいいわけでもない、ないない尽くしのスタートだったから

こりゃあひと様から助けてもらわないと、メシが食えないな、とすぐに悟った。

そんで、ひと様から助けてもらいたいなら、

俺もひと様のために精一杯のことをしなきゃ、と思ったわけだ。

 

といっても、若くて何も持たない俺にできることといったら

身体を張るか、気持ちを張るか、それしかなかった。

だから俺は、そればっかり一生懸命やったよ。

 

中には俺を利用して、騙して去って行った奴もいるけど、

多くは、俺の気持ちに対して、重要な教えを授けてくれたり

バックアップしてくれたりした。

俺が何かしらの結果を出したときには、我がことのように喜んでもくれた。

 

年齢を重ねるにつれて、今度は俺が誰かの面倒をみたり、

力になったりする機会も増えていった。

その相手が、年月を経て今では立派に成長し、

良い結果を出している姿を見るのは楽しい。

 

それこそ二倍三倍の、掛け算の喜びなんだよな。

 

「本当に他人のことばかり考えて、よくやりますね。えらいですね」

と言ってくれるひとがたまにいるけど、

えらいって言われるようなことじゃないんだ。

 

「自分が良くなることを考える」ことよりも

「他人が良くなることを考える」生き方のほうが、絶対に楽しい。

俺はそれを知っているから、そうしているだけなのだ。