オタクが勝つ

「押川さんは人間オタクですね」とあるひとに言われた。

 

そうなのだ。

俺は人間観察に関しては、筋金入りだと自分でも思う。

 

そもそも俺のお袋がそういうタイプで、

まだ幼稚園児だった俺に向かって、人間の見方……

「こういう表情、こういう目つきは悪い奴だ」

「こういう顔をしている人間は、本当に頭がいい」

とかいうことを、常日頃から話してきかせるようなひとだった。

 

それもあって、ものごころついた頃には、

ひとの顔(表情)、しぐさ、振る舞い、話す声のトーンなんかを

とにかくじっと見ては、「なんだ?」と考える癖がついた。

 

だから俺にとっては、美人やイケメンという顔の造りは

あまり興味をひかれるところではない。

表情や言動には、どうしたって生き方や生き様が滲み出るし、

それには、表面的な造作をもかき消す威力があるからだ。

 

この仕事をはじめたのも、こころの病気のひとは

いいものわるいものを全部素直にさらけ出してみせてくれる、

そこに魅力を感じたからなんだな。

 

若い頃はとくに、勉強になると思うから、

どんなにヤバい相手でも会いに行った。

それでも実際に会える人間は限られているから

映画で“人間”を見まくって研究していた時期もある。

 

好きだし楽しいからやっているのだが、

見なくてよいものを見るときもあり

ひとに会うのがきついなあ……と思うこともある。

 

しかしそれでメシを食っている以上、

継続や努力はもちろん、リスクも背負っていかねばなるまい。

 

今や資格商売も乱立し、専門家が増えまくっている時代である。

同じ資格をもっていても、メシを食えるひとと食えないひとがいる。

 

俺の知っている専門家で、優秀で金もきっちり稼いでいるひとたちは、

その分野に関する知識も行動も、もはやオタクの枠にあるもんな。

ただしオタクはオタクでも、社会性のあるオタクだが。

 

専門家として頭ひとつ抜きんでようと思ったら

専門家を超えたオタクにならなければならないのだろう。

最後はオタクが勝つ!

俺もまだまだだ、頑張ろう。