金の切れ目が…

先日ブログに書いた、老齢の父親が精神疾患を患う娘を

殺害してしまった事件について、

書き足りないことがあったので、改めて書いておく。

 

ニュースとなった事件の内容を読んで、俺が気になったのは、

殺害の直前に、親が娘から「一人暮らしをしたい」と言われ、

それを断った、というくだりである。

 

以前にも娘の希望で一人暮らしをさせたが、

戻ってきてしまい、うまくいかなかったともあるので、

父親には、もう娘のために動く気力が、残っていなかったのだろう。

 

しかし俺としては、心理的な要因以外に、

経済的な限界もあったのではないかと、思っている。

 

なぜなら、俺への相談でも、

背景に「金のハナシ」があるケースは、少なくないからだ。

 

一つ目は、今60代以降の親世代に、顕著にみられる傾向だ。

戦後の豊かな時代を生きてきただけあり、

経済的には、それなりに余裕をもって過ごしてきている。

それもあってか、成人してからも働かないでいる子供に対して

けっこうな額の金を遣っている。

 

たとえば、「車があれば就職ができるのに」と言われれば、

教習所に通う金から、新車の代金まで、出してやり、

「就職するためには、〇○の資格をとならければ」と言われれば、

バカ高い教材や、学校に行くための金を出してやり、

「自立の第一歩として、一人暮らしをしたい」と言われれば、

都内の一等地にあるマンションをポンと買ってやり……。

子供とのコミュニケーションを、すべて金で解決している。

 

子供のほうも、しだいに親を利用する巧みさを身につけ、

気がつけば、自立どころか、金の要求がエスカレートする。

 

やがて親は、経済的な限界を迎える。

数千万を子供につぎ込んだような例や、

自宅を売り払ったり、借金までしているような例もある。

それでも子供は無限に金を要求し、暴言や暴力を浴びせるため、

困り切った親が、俺のところにやってくる。

 

そのようなお金の遣い方について親は、

「子供の自立のために、良かれと思った」と言うが、

解決にもそれなりの金がかかると分かると、

スパッと子供を切り捨てる、という冷酷な一面をみせる。

 

前回、取り上げたニュースでは、親が子供を殺害するに至っているが、

そこまでいかなくても、ひきこもり、メシもまともに食わず、

痩せ細って衰弱している本人を、放置しているような例もある。

あるいは、本人がアルコールや薬物に溺れ、

どうみても体調を崩しているのに、見て見ぬ振りをしている。

 

折しも昨日は、関西系の暴力団である山口組が分裂か?

というニュースが流れていた。

分裂に至る経緯には、上納金などカネの使途が不明朗といった批判も、

山口組内部であったそうである。

 

ニュースでは、兵庫県警の捜査幹部が、

「今のヤクザの世界には仁義も何もない。頭の中にあるのはカネだ」

と語ってもいた。

 

おそらく一般の皆さんは、このニュースを見て、

「暴力団は、金、金言って、恐ろしいね」と思うだろう。

しかし俺は、アウトローの世界で起きていることは、

一般社会で起きている現象と無関係ではないと思うし、

むしろ最先端で現しているのではないか、と思うこともある。

 

「金の切れ目が縁の切れ目」どころか、

「金の切れ目が“命”の切れ目」。

 

そういう家族は、これからますます、

増えてゆくのかもしれない。

 

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