ローカルで生きる

いつだったか災害時のニュースを見ていたときに、

インタビューに答えた現地住民の方が、

「危険情報や安否確認は、LINEなどを頼りにしている」

と言っていた。

 

そのひとは、こうも話していた。

「小・中学校時代の同級生の情報が、一番、信頼できる」

 

俺はこの言葉に、ローカルで生きることの強みを感じた。

 

ローカルというと、「=田舎」というイメージで、

どちらかというとマイナスに捉えられがちだが、

俺は最近、ローカルの長所を見直しているのだ。

 

全部が全部、そうだとは言わないが、

ローカルの場合、小さなコミュニティの中で、

友人付き合いから恋愛から仕事まですべて、おさまっていることが多い。

 

小・中学校時代の同級生同士が、くっついたり離れたりしながら、

おっちゃん・おばちゃんになっても、仲良くしている。

 

面倒くさい側面もあるのだが、これのいいところは、

ローカルの目が、きちんと入ることである。

 

それこそ、子供のときから知っている間柄だからこそ、

ダメなものはダメだと言うし、仮に失敗することがあっても、

「あいつは、昔からああいう奴やったからなあ」で、済んでしまう。

 

俺は仕事の都合で、ときどき故郷の北九州に帰るのだが、

その辺のファミレスで飯を食っているだけでも、

「今、○○で押川君、見かけたよ~」とかメールが来る。

 

面倒くさいから、だいたい

「それは、俺じゃないよ」と返信しておくんだけど(笑)、

悪いことはできねーな、と思うよね。

 

だからこそ、誰かが困っているときには、

「なんとかしちゃろうぜ」という感じで、

自然に、無理なく、ひとが集まってくる。

 

俺がこれまでに携わった仕事を振り返ってみても、

「幼なじみ同士で結婚して、ずっと生まれ育った町で生活している」

という親からの相談や依頼は、ほとんどない。

 

おそらくこのような家庭では、

家族の問題が起きても、ローカルルールの中で、

対応や解決ができているのではないだろうか。

 

反対に、相談や依頼で多いのは、やはり関東近辺である。

 

それも、それぞれ地方から東京に出てきた両親が、

出会って結婚して、関東近辺に土地やら家やらを買って、

というパターンが、非常に多い。

 

こういう夫婦の子供が、問題を起こすようになると

互いの出身地は遠いし、頼れるローカル環境もなく、

最初から家族ごと、孤立してしまうのである。

 

そもそも、遠く離れた土地の出身者同士となると、

お互いのルーツをよく知らないまま(知る術もないまま)、

結婚してしまっていることも、少なくない。

 

俺の仕事では、ヒアリングの範囲は、

両親の生育歴や家庭環境にまで及ぶのだが、

両親が互いに、相手の生育歴や家庭環境を詳しく知らない

なんてことも、けっこうある。

 

俺からすると、ファンタジーで結婚しているようにしか思えないし、

ルーツを大事にしない環境で育てられれば、そりゃあ子供は

土台もなくフラフラするよな、と思う。

 

俺自身もそうだけど、地方ローカルから東京に出ようと考えるひとって、

やっぱり目標やら希望やら夢やら、

なにかしら「欲求」をもって出てくると思うんだよな。

(もちろん、転勤など致し方ない理由の方もいるだろうが)

 

それが悪いことだとは思わないが、

単身で都会に出たときには、ローカルの目が入らないからこそ、

それなりの覚悟が必要だと思う。

 

故郷での自分は関係ないとばかりに切り捨てたり、

ローカルのノリで、「言わなくても分かってくれるだろう」

なんて好き勝手な振る舞いをしていると、痛い目に遭う。

 

そして、痛い目に遭ったときに、

地方ローカル出身の者には、とても冷たく映るのが、

東京という街なのである。