血縁より他人
絵を描くとか、小説を書くとか、あるいは人間国宝級の芸術品を作り出すとか、そういう特別な、神様からもらった才能をもっている人は別として、それ以外の人たちは、老いも若きも、イケメンもブサイクも、金持ちも貧乏も、しょせんは他者とつながることで、世界を広げるしかない。
他者に心をくばって、うまく折り合いをつけて、社会とつながっていくってことをしないと、金も稼げないわけだし。
だけど、問題を抱えている家族を見ていると、正反対のことをしているんだよな。他者とつながるんじゃなくて、自分とこの血縁関係ばっかり広げようとしている。あれこそが大いなる過ちなんじゃないかと、最近、俺は気づいた。
なんでそう気づいたかって言うと、俺のところに依頼にくるケースに、そういうのが多いからだ。たとえば、親父が経営者で、副社長とか専務とかの役職は全部、自分の妻とか子供とか親戚とか、身内で固めてるケースな。そんで親父はその身内に、自分のことを「社長!」とか呼ばせて、ふんぞりかえってる。子供が問題を起こして、俺のところに相談に来たくせに、なぜか俺の事務所でも威張ってるんだから、ほんと、まいっちゃうよな。
俺はそういう姿を見ると、「ああ、この人は、血縁以外の従業員は大事にしてないんだろうな」っていうのがすぐ分かるし、「だから子供が、心の病気になったり、犯罪を犯したりするんだよな」とも思う。
もう一つ多いのが、親が医者とか弁護士とかで、子供も同じ職業につかせようとするやつ。あれも、しょせんは血縁関係の話だろ。「うちは医者の家系なんだから」って言って、子供の意思なんか関係なく、しこしこ勉強をさせて、自分のあとを継がせようとするんだから。それで子供が精神障害者や犯罪者になった例を、俺はくさるほど見てきた。
ふんぞりかえって他者を排除して、自分たち血縁だけで世界を構築しようなんて、初めから限界が見えている。とくに今は、なんでもグローバル化している時代なんだから、「血縁を大事にして~」なんて考えでいたら、それこそ一族は終焉を迎えるだけだ。
子供が心の病気になったり、犯罪者になったりすれば、結局は、他人(専門家や専門機関)に頭を下げなきゃいけなくなる。最悪の場合、俺みたいな人間にまで、金を払って「助けてください」って言わなきゃいけなくなるんだから、皮肉なもんだね。