「息子を包丁で刺した」 74歳父親を逮捕、45歳長男は死亡
https://youtu.be/UcNwUKzvvQo
(以下引用:TBSnewsi 2015年10月18日)
横浜市で、就寝中の長男を刃物で刺して殺害しようとしたとして、74歳の父親が逮捕されました。
殺人未遂の疑いで逮捕されたのは、横浜市の無職・渡部進容疑者(74)で、18日未明、自宅マンションの部屋で長男の琢磨さん(45)の首を包丁で刺して、殺害しようとした疑いが持たれています。琢磨さんは病院に搬送されましたが、まもなく死亡が確認されました。
警察によりますと、渡部容疑者は18日午前3時45分ごろ、近くの交番に「息子を包丁で刺した」と自首し、駆けつけた警察官が寝室で血を流して倒れている琢磨さんを見つけたということです。
渡部容疑者は妻と2人でこのマンションで生活していて、琢磨さんは障害があり、普段は施設で生活をしていたということです。警察は容疑を殺人に切り替えて捜査する方針です。
--------------------
「問題のある子供を親が殺す」ことに対してのハードルは、
もはや、とことん下がってしまったようだ。
ニュース映像を見ると、自宅はなかなかの良いマンションに見える。
経済的な困窮があったとは考えにくく、とすると、
親も社会的には、仕事なり生活なり、きちんとしてきたのだろうと推測できる。
そういう親が、息子の人生を完全に拒絶し、
一方的なやり方で、幕引きをはかる。
詳しいことは分からないが、息子には障害があったという。
ここに至るまでには、長年の経緯があったはずだ。
突発的に殺意が湧いたわけではないと思う。
「子供を殺すしかない」、あるいは「子供に殺されるかもしれない」
そういった思いを、じわじわと募らせていった時間があるはずだ。
この国には、こういった問題を抱える家族に対して、
殺害を踏みとどまらせることができる人間や、機関がない。
そもそも、最初の相談先である保健所の職員に、
『こころの問題は、「死」に直結することさえある』
という認識が、あまりにも希有だ。
俺からすると、対象者が健全な人生を放棄し、
もはや緩やかに自殺をしているとしか思えないような、そんな状態にあるのに、
家族は、「保健所に相談にいったけど、入院のレベルではないと言われたので」
などと言う。
相談にいく家族にも、問題がある。
家族自身が現実を軽く受け止めていたり、
相談にいっても、本当のことを伝えていなかったりする。
この、人間一人に対する命の軽さが、
現在の、親子間の殺傷事件の多発につながっていると俺は思う。
これを防ぐには、直球で相談できる機関をつくるしかない。
家族と保健所の間に、もう一つ、家族の問題全般に関して、
リアルな状況を吐露できる、スペシャリスト集団の設立である。
家族だけではなく、親子関係に悩む当事者も、駆け込める場所だ。
先日のブログでは、危険な状態にある精神障害者を、
警察官が誤認により射殺してしまうアメリカの実態について述べた。
日本では銃社会などあり得ないし、おそらく未来永劫ないだろう。
だが、その代わりに我が国では、親自身が子供を始末する。
そんなやり方が、まかりとおり始めている。
ニュースに付随された読者のコメントを見ても、
皆、家族がどれだけ苦しみ、悩んでいるか、分かっている。
そのうえで、「親も苦しんだはず」「しょうがないよね」と語る。
「(親が)執行猶予ですむといいですね」などというコメントもあって、
それには、同調する「いいね」ボタンが、けっこう押されている。
たしかに家族は長年、苦しんだ。
しかし、裏を返せば、当事者も長年苦しんできたのだ。
最も苦境に立たされている人たちを、救えていない。
この国のメンタルヘルス行政の根幹は、「機能していない」のである。
2014年の法改正後、何が起きているかを見れば、一目瞭然だ。
高度な成長をとげた国は、人間のありようも高度に変貌する。
個々人の性格や気質も、昔とは変わってくるのは当たり前である。
洗練され、精神的・物質的に豊かな暮らしを送るひとが増えるのだから、
その反面、凶暴性や暴力性が激化することは、当然ともいえる。
それは、なにも病気を抱えている人間に限ったことではない。
いわゆる「一般人」といわれる人たちにおいても、それは加速している。
ただそれが水面下に隠れやすくなり、陰湿になっているだけのことだ。
「一般人」といわれる人たちでさえ、ときには、
金やら性やら物欲やらにまみれて、「マフィア」みたいな動きをとる。
一般家庭の、ごくごく一般的にみえる親が、
邪魔になった子供を殺すのも、まさにマフィアそのものだ。