「この子殺して私も死ぬ」不登校の小学生次男の首をはさみで切りつけ

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(以下引用:産経新聞 11月10日)

 

「この子殺して私も死ぬ」不登校の小学生次男の首をはさみで切りつけ

 母親を現行犯逮捕 大阪・枚方

 

小学生の次男(10)の首をはさみで切り付けて殺害しようとしたとして、大阪府警枚方署は9日、殺人未遂容疑で、同府枚方市の無職の女(41)を現行犯逮捕した。同署によると、次男は病院に搬送されたが軽傷という。

 

逮捕容疑は9日午後5時25分ごろ、枚方市内の小学校の廊下で、次男の首をはさみで切り付けて殺害しようとしたとしている。

 

同署によると、女は不登校になっていた次男を連れて小学校を訪れ、午後5時ごろから担任の教諭と話をしていたが、途中で「この子を殺して私も死ぬ」などと言って、持っていたはさみで次男にいきなり切りつけた。教諭が取り押さえて110番した。

 

女は精神疾患の可能性があるという。

 

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20151110-00000504-san-soci

 

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とうとうここまで来たか、と衝撃を受けた。

 

家庭内の問題に関しては、

家族(親)が徹底的に隠し、家の中だけで行われているものと、

近隣住民や第三者など、外に向かって表出しているものと、二つある。

 

今回は後者だが、それが学校という教育現場で、

なおかつ子供を切りつけるという最悪のかたちで、噴出してしまった。

 

母親には精神疾患の可能性があるということなので、

この母子の家族だけでなく、近隣住民や、

学校教師、もしかしたら同級生の保護者の中には

うすうす異変に気づいていたひともいたと思う。

 

それでも、どうすればいいのか分からないというのが本音だろうし、

「他人の家庭に口出ししない」、それが今の日本の文化でもある。

 

以前、俺の著書を読んだという教師の方が、こんなことを言っていた。

 

「子供の発達障害など精神疾患に関しては、教員の理解も深まりつつあるし、

スクールカウンセラーや養護教諭に相談することもできる。

しかし中には、子供の不登校、虐待や育児放棄の背景に、

親の精神疾患(の疑い)がある場合もある。

対象が親となると、どう対応してよいものか分からないし、とても難しい」

 

今回の件に関しては、子供の不登校と母親の精神疾患、二つの問題があり、

どちらか一方を解決すればよい、という問題ではない。

母親には、保健所を経由して相談先を確保し、必要に応じて医療につなげるなどのケア、

子供については、児童相談所との連携した対応が必要であった。

 

また、今回の事件で言えば、母親が担任との面談に、

はさみを持ち込んでいる点から、自傷他害の恐れがあったと思われる。

親自身の言動に、異変や殺気めいたものが、あったはずだ。

 

その異変をキャッチし、「命」にかかわる緊急時の対応をするには、

知識や情報、現場での経験などが必要で、

いずれにしても、担任教諭が一人で背負える問題ではない。

 

スクールカウンセラーという存在もいる。

学校で起こるあらゆる危機的状況に、心理・カウンセリング的側面から

迅速かつ的確に対応しなければならないとされているが、

緊急時の現場対応ができるかといわれると、甚だ疑問である。

そもそも、すべての学校に配置されているわけではない。

 

親子の「命」にかかわる事件が、学校内でも起こりうるという観点から、

どう対応していくか、日頃からのシミュレーションが必要である。

 

以前、日野市で起きた無理心中の事件もそうであるように、

母親自殺の巻き添えか? 8歳の男児重傷 本人は重体

こういった事件については、続報が語られることはほとんどないため、

結局、家庭内で何が起きていたのか、

なぜ、「死」に至るほど追い詰められたのか、はっきりせず、

対応策を考える機会も、あまりない。

 

だが、これだけ身近なところで、事件が起きるようになったのだ。

一般のひとも、知識を持っておくべき時代がきたと言える。

 

『「子供を殺してください」という親たち』では

リアルな現実をあますところなく書いている。

教育現場の先生方にも、ぜひ、手にとって読んでもらいたい。

 

それにしても、子供が軽症であったのが、不幸中の幸いだ。

しかし、心の傷はいかばかりかと思う。

今後の生活のためにも、母子ともに

心のケアが行われることを祈ってやまない。

 

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