「娘を妻と一緒に殺した」両親逮捕へ 大阪
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(以下引用:毎日新聞11月21日)
<女性遺体>「娘を妻と一緒に殺した」両親逮捕へ 大阪
21日午後4時ごろ、大阪府交野市倉治3の民家で、この家に住む無職の江口美奈さん(43)が頭から血を流して死亡しているのが見つかった。同日朝、府南部の海岸で保護された江口さんの父親(86)が警察官に「娘を妻と一緒に殺し、遺体を家に置いてきた」と説明。府警は父親と母親(70)から事情を聴いており、死体遺棄容疑で逮捕状を請求する。
府警交野署によると、江口さんは両親との3人暮らし。両親は21日午前8時5分ごろ、自宅から約50キロ離れた貝塚市の海岸の岸壁で、海に転落しかけた軽乗用車の中にいるところを釣り人に発見された。父親は駆け付けた警察官に「18日に娘の頭を鈍器で何度も殴り、妻とひもで首を絞めて殺した。娘の病気で悩んでいた」と話した。両親は自殺を図ろうとしていたという。
江口さんは自宅1階の和室に敷かれた布団上であおむけに倒れていた。死後数日とみられ、頭には複数の殴られた痕があった。今後、殺人容疑でも調べる。【遠藤浩二、大久保昂】
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「娘の病気で悩んでいた」とあるが、別の記事には、
父親が「娘は精神的に不安定だった」と話している、とあった。
しかし、鈍器で何度も頭を殴った上に首を絞めるなんて、
困窮以上の、憎しみのようなものを感じてしまう。
親が70、80代の高齢になって相談に来るケースは、
俺のところでも増えている。
以前から書いていることだが、経済的に余裕のある家庭や、
親がまだ50、60代で、現役で働いているような家庭については、
行政から、「家族で頑張ってください」と言われてしまうことが多い。
しかし、70、80代の高齢の親から、
誠心誠意、頭を下げて協力を請われたときには、
行政側も、そう無碍にはできないはずだ。
『病気のひと、困っているひとを助けるのは当たり前』
俺はガキの頃、親や教師から、そういうふうに教えられて育ってきたぞ。
それともその考えは、もう古いというのだろうか?
そもそも国民皆保険のこの国においては、病気の人間は、
適切な医療につながることができるようになっている。
その医療にしても、世界に劣らない最先端を突っ走っているわけだ。
それなのに、精神的に不安定な子供、障害や病気をもつ子供を、親が殺す。
このような事件が、今年だけでも、どれだけの数あったことだろう。
そして最近の判例では、子供に手をかけた親には執行猶予がつくことが多い。
「家族でも手に負えない問題のある子供は、親が始末していい」
そう言わんばかりのこの現実から、目を逸らすことは、
人間の根幹、生命に対する倫理観を、放棄するに等しい。
それなのになぜ、ひきこもりや、精神障害、
総じてメンタルヘルスに携わる専門家は、サイレントを決め込んでいるのか。
こころの問題に関するプロフェッショナルは、
もうこの国にはいないということか。
それならば、国民にその現実、そして窮状を知らしめ、
それぞれが覚悟をもって家族をもち、子を育てなければならない。
「家族でやってください」という行政の言葉は、すでにそれを物語っている。
精神保健福祉法の改正(2014年4月施行)が決まったときから、
俺は、こういった家族の事件が、爆発的に起きるだろうと予測していた。
だからこそ、ブログを開設し、著書の出版にも踏み切った。
拙著は5万部を超えた。
「本を読んで共感した」「我が家もまったく同じだ」
という、読者からの悲痛な声も、たくさんいただいた。
担当編集者からは、「出版から半年近く経っても、
まだジリジリと売れ続けている」と聞いている。
先日もコメント欄に、司法書士事務所に勤務する方から、
本の感想をいただいた。
弁護士事務所や、司法書士事務所にも、
類似の相談が、多数、舞い込んでいるのだ。
しかし、国内のメディアは、この問題には触れようとしない。
俺は、金のためにこの本を書いたのではない。
実情を多くのひとに知ってもらいたいから書いたのだ。
そして、「死」を考えるほど追いつめられている家族には、
精神保健の実態を知ったうえで、粘り強く交渉し、
専門家の協力や支援をもぎとってほしい。
そのための具体的なアドバイスも書いた。
俺自身は、国内のメディアがこの問題を取り上げてくれない以上、
もう、海外のメディアにこの現状を伝えるしかないと考えている。
亡くなられた娘さんのご冥福を心から祈ります。