ゴウ会長の生き様
散歩の途中で、顔なじみのラブラドール・おの君(仮名)に会う。
ゴウ会長は、すごい勢いで、おの君に吠えかかるが、
おの君は、泰然自若としている。
(ちなみに飼い主さんによると、おの君のほうが年下だ)
ゴウ会長はいつもすぐに負けを認め、すごすごと引きさがる。
おの君はその後、悠々とでかいうんこをし、
満足そうな笑みを浮かべて、俺たちを見送った。
犬の性格もいろいろだな。
ちなみにゴウ会長は、若かりし頃、しつけのために、
犬の訓練所で、約三ヶ月の寮生活を送った。
とても優秀かつ厳しい先生がいて、警察犬を多数、
排出していることでも超有名な訓練所だ。
ゴウ会長は、家庭犬訓練試験には、やっと合格して帰ってきたが、
寮生活は辛かったようで、帰宅時にはだいぶん痩せていた。
ゴウ会長の同期には、厳しい訓練を乗り越え、警察犬になった犬もいたが、
ゴウ会長には、あまり向いていなかったのだろう。
今でも、最低限のしつけは覚えているものの、
興奮すると人間に飛びつくし、おの君のような後輩犬にもすぐ吠えかかる。
この間、訓練所の先生に久しぶりに会ったら、例のごとく飛びかかったため、
「訓練所の授業料をドブに捨てちゃったな!」と笑われた。
時々テレビで、事件捜査に参加しているラブラドールの警察犬を観る。
使命に燃えたりりしい顔つきは、本当にかっこいいと思う。
かたやゴウ会長は、俺の横で、いびきをかいて寝ている。
「会長の同級生にも、ああやって頑張っている奴らがいるんだぞ」
と、俺はつぶやく。
おの君は、おそらく訓練所には通っていないだろうけれど、
落ち着きもあり、威風堂々して顔つきもバッチリだ。
体つきもがっちりして、筋肉隆々。
外犬として飼われ、番犬の仕事をまっとうしている。
ついでに、ウンコもでかいし、チ○コもでかい。
社会性も兼ね備え、いうなれば地域の町内会長の座にある。
難易度の高い訓練所に入学し、ぎりぎりでも卒業はしたゴウ会長だが、
おの君の足元にも及ばない、アホ面に仕上がった。
しかし、それでも毎日、ご機嫌に暮らしている。
俺のバックとして、こころの支えとなり、じゅうぶんにその役割を果たしている。
生きているだけで、意味があるんだ。
この理屈は、人間にも当てはまるように思えた。