族
「自分のことは、自分でしろ。
一人でも、いろんなことを、やれるようにしておけ」
ガキの頃、お袋から、さんざん言われてきたことだ。
「孤独やさみしさを埋めるためだけに、
『族』で集まったときには、失敗するぞ」
深夜にバイクの音を響かせる、「暴走族」を例にとって、
そんなふうにも言っていた。
最近は、「家族」もそうなんじゃないかな……
という気がしている。
自立した精神や、互いを尊重する気持ち。
そういうものがなくて、ただ「族」として集まったときには、
大きな欠陥しか生まれない。
「族」は「俗」にも置き換えられるだろう。
純粋な愛情や相手に対する尊敬ではなく、
たとえばイケメン美人だったから、
金や安定した地位を持っていたから、
独身では世間体が悪いから……、
そんな「俗」にまみれた理由でつくった「家族」に、
明るい未来はないのである。
クリスマスから年末年始にかけて、
世間は浮かれモードに突入するが、
俺のところは関係なく、相談の電話が鳴る。
どの案件も、クリスマスだの正月だのと言っていられない、
明日の命の補償すらできない、重篤な状態にある。
俺にとって年末年始のこの季節は、
「家族とは何か?」ということを、
否応なしに考えさせられる時期でもあるのだ。
今年も仕事を通じて、新たな気づきがたくさんあった。
単純に群れをなすだけで、安定や幸せが得られる時代は
もう終わったのだと、つくづく思わされた。
「個」の力を、いかようにしてつけていくか。
家庭のなかでも、社会においても、
それこそがますます重要視されることだろう。
「自分のことは、自分でしろ。
一人でも、いろんなことを、やれるようにしておけ」
今さらながら、お袋の教えが、身に染みる。