春
今年も桜の季節がやってきた。
去年のブログでも書いたが、
春先は、俺が携わっている方々がフワフワとなる季節だ。
入院中のある男性は、最近、俺の携帯に20回も電話をかけてきた。
ちょうど大事な打ち合わせ中で電話をとれなかったのだが、留守電が残されていた。
「昨日、自分が透明人間になって、押川さんを殴っちゃったと思うんですけど、
押川さん、死んでないですか?」
「この間の巨人対広島戦で、押川さんがホームランを打っていたんですけど、
いつの間にプロ野球選手になったんですか」
「今、笑福亭鶴瓶がテレビに出ていて、押川さんと顔が似ているんですけど、
押川さんじゃないですよね?」
いろいろと突っ込みどころが満載だ(笑)
彼とは10年以上の付き合いになる。
長年、統合失調症を患い、入退院を繰り返してきた。
妄想が固定化していることもあり、現在は長期療養中である。
この季節はとくに、その妄想が激しくなる。
上にあげたような、ちょっと笑える発言ならまだしも
状態が悪いと、「死ね」とか「殺す」とかいう電話がかかってくる。
それもあって、なかなか社会復帰の目処は立たないが、
医療機関で手厚いケアをしてもらえているからこそ、
彼自身も、そして我々も、命を脅かされることなく生活ができている。
10件くらい入っていた留守電を、一つ一つ聞きながら俺は、
「今年も春が来たなあ……」と思ったのである。