愛媛新聞のコラム
愛媛新聞のコラムにて、「『子供を殺してください』という親たち」を取り上げていただきました。
大人の引きこもり
「働かずに家でごろごろしている」50歳の長男に悩んでいたという。新潟県で先日、73歳の母親による無理心中とみられる事件が起きた▲
長男は中学卒業後に何度か就職したが、長くは続かず、ずっと引きこもり状態だった。わが子をあやめた母親の葛藤はいかばかりだったか。誰かに救いを求めることができなかったのかと悔やまれる▲
家族だけで問題を抱え込み苦しむ親子。北九州市で自立・更生支援施設を主宰する押川剛さんの「『子供を殺してください』という親たち」(新潮文庫)には、そんな家族の事例が出てくる▲
母親を奴隷扱いし、ごみに埋もれて生活する。テレビの番組に怒り「日本は堕落している」と夜中までどなり散らす。酒に溺れ包丁を向ける息子に父親はつぶやく。「いっそいなくなってくれれば」と▲
押川さんのところには、ここ数年、子どもが30~40代、親が60~70代の世代からの相談が急増しているそうだ。引きこもりは全国で160万人との推計もある。家族は地域から孤立しがちになり、長引けばその分、親も年を取っていく▲
同じ悩みを抱える親たちが9年前に立ち上げた「こまどりの会」が松山市にある。家庭を訪問して支援する「ひきこもりピアサポーター」の仕組みもある。体験を話し、励まし合うことで前向きになり、子どもの回復につなげていく。周囲の理解と温かい目が必要だ。もがく親子を一人でも多く救い出したい。
記事中で触れられている新潟の事件とは、5月8日に三条市で起きた、高齢の母親が無職の息子を殺害し、
自らも自殺してしまった事件のことだ。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160509-00000556-san-soci
本当に胸をかきむしられるような事件だが、現状の制度や仕組み、能力別の役割分担(人的配置や数)では、もはや今後も、このような事件が爆発的に増えるだけだ。
「『子供を殺してください』という親たち」を書いたのは、現状を知ってもらい、なんとか制度を変え、新たな機関を創設しなければならない。そしてこれ以上、このような事件が起きるのを食い止めたい。その一心であった。
著書の刊行からもうすぐ一年になるが、今でも、とくに地方紙のような媒体で関心を持っていただき、取り上げてもらえることに感謝したい。なぜなら、現状の実態把握や現場の対応は、すべて各地方自治体・各都道府県の警察当局が担っているからである。
また、最近になって、著書を読んだ各分野のプロフェッショナルの方々から、制度を変えるための具体的な提言、協力などをいただけるようになった。俺は俺のできることを粛々と進めていく。
そして次回の著書では、より具体的に家族の姿を描き、どういった制度や仕組みが必要なのかといったことに関しても、現実に即したより具体的な提言を行っていく。