宝島鼻歌

こんな俺だけど、昔は、ひどく落ち込むこともあった。とくに仕事がうまくまわらなくて、もっぱら懐が寂しい時に、そういう状態になった。

まだ警備会社をやっていた頃のことだ。しょせんは個人経営の会社だったから、仕事もお金もまわらない厳しい時期っていうのが、定期的に波のように押し寄せてきていた。

気力どころか食欲もわかなくて、なんだかずっと体調もすぐれないし、これがうつ病ってやつかなあ…なんて思ったよ。

 

俺はあるとき、この“うつっぽい落ち込み”を打破する方法を編み出した。その秘技は、「鼻歌」である。ウンコをしている時も小便をしている時も歩いているときも、車を運転している時も、じっとしている時も寝る前も、とにかく鼻歌を歌うのだ。

そうするとあーら不思議! 俺の意思とは関係のないところで、気分が盛り上がってくるじゃないか!

 

俺は、この鼻歌効果に気づいて以来、研究に研究を重ねた。曲調によって効果が変わるのかと思い、ロックやクラシック、ポップスなど、色んな曲を鼻歌ってみた。その結果、【フュージョンが一番効く】という結論にいたった。

歌詞がある歌は、どうしても色々考えてしまうからよくない。明るい歌詞だと、逆にみじめな気分になるという副作用もあった。それで、歌詞のまったくないフュージョンに辿りついたのだ。

フュージョンの中でも最高だったのが、当時の「THE SQUARE」(今は「T-SQUARE」)だ。この「THE SQUARE」の『宝島』、これに勝るものはなかった。

 

俺が「THE SQUARE」をすすめると、たいていの人が『OMENS OF LOVE』に手を出しちゃったり、下手したら『TRUTH』なんかに手を出して、F1ドライバー気分になっちゃうんだけど、これはまずい。コーナーのきついカーブを攻めちゃったりしだすからな。

交通事故を起こすぞ。

 

とにかく『宝島』だ。「カシオペア」っていうバンドの『ASAYAKE』も試してみたが、やっぱり『宝島』にはかなわない。2、3日くらい『宝島』を鼻歌で歌っていれば、自然と落ち込みから回復して、元気になっている

押川のバカが、またアホなこと言ってるよ、と思われるかな?まあ、嘘だと思って試してみてほしい。

『宝島』っていう曲名もいいよな。「宝島鼻歌」で元気になったあとは、すごいタイミングでばんばん仕事が入ってきたりしたからな。俺はもう、つまらないことで落ち込んだりしない。金がなくなっても全然、平気さ。「宝島鼻歌」で、そのうちなんとかなるだろーって感じだ。事務所のスタッフには迷惑をかけることもあるけどね。

世の中には、お金が原因で命を断つ奴もいるからな。「宝島鼻歌」療法は、意外と馬鹿にできないと思うんだ。

「T-SQUARE」すげえな! 何回も何回も何回も聴くといいよ。音楽療法というのがあるけど、音楽ってほんとうに力があるな。