尊い命が奪われたあげく、司法機関に丸投げされる…これが日本の現実だ!

 

小5殺害、中村桜洲被告に懲役25年求刑 和歌山地検「厳しく非難できる」

和歌山県紀の川市で平成27年2月、市立名手小5年、森田都史君=当時(11)=が刺殺された事件で、殺人などの罪に問われた中村桜洲被告(24)に対する裁判員裁判の論告求刑公判が21日、和歌山地裁(浅見健次郎裁判長)で開かれた。検察側は懲役25年を求刑し、結審した。判決は28日に言い渡される。

中村被告は、事件当時に心神耗弱状態だったとされており、量刑が最大の争点。公判では、事件後に精神鑑定を行った鑑定医が、被告が統合失調症または妄想性障害を発症しているとした上で、「(刑事責任に)全く問えないということはない」と証言していた。

検察側は論告で、被告が犯行後に血液が付着した凶器を洗い流したことなどから、「事件の発覚を免れようとするなど目的にかなった行動をとる力があった。厳しい非難を加えることは十分に可能」と主張。被害者参加制度に基づき、都史君の父親(69)が代理人弁護士を通じて「本来は極刑を望むが無理であれば無期懲役が相当」と求刑意見を述べた。一方、弁護側は、妄想が犯行に影響していたと主張。「すべては被害妄想から始まった。治療やカウンセリングが必要」とし、情状酌量を求めた。

起訴状によると、中村被告は27年2月5日午後4時15分ごろ、同市の空き地で、都史君の右胸を刃物で突き刺すなどして失血死させたとしている。

引用:産経新聞 2017/3/21

 

責任能力の有無や量刑は司法の決めるところだが、

事件が起きたあとに「治療やカウンセリングが必要」と言われる現実を、腹立たしく思う!

 

この事件の直後には、中村被告について

「工業高校を中退後、家にひきこもりがちだった」

「ゴーグルを着けて家の前で竹刀を振っていたり、上半身裸で太い木の棒を持ったりする姿が度々目撃されていた」

「傘をもって男児の中学生の兄を追いかけるトラブルがあった」

「男児の家をのぞき込む様子を、近所の人に目撃されていた」

といった報道がなされていた。

 

被告が警察車両で移送される映像も繰り返し流れたが、

きょろきょろと周囲を見渡し、頬を膨らませるなど挙動不審な様子がみてとれた。

 

周囲の人たちは、被告の言動に気づいていたはずだし、

事件を起こす前に、医療につなげるべきであった。

 

被告の家族が、行政や医療機関に相談していたのかは分からない。

しかし制度面について言えば、病識のない対象者を医療につなげることは、

どんどん難しくなっている。

 

たとえば最近は、精神科病院での入院治療は「任意」を条件とし、

医療保護入院での受け入れは極力しない、という医療機関が増えつつある。

「医療保護入院(の制度)はもう必要ない」という専門家まで現れだしたと聞く。

(注:医療保護入院とは、入院を必要とする精神障害者で、自傷他害のおそれはないが、

任意入院を行う状態にない者を対象として、本人の同意がなくても、

精神保健指定医の診察及び家族等の同意があれば入院させることができる入院制度)

 

これは以前から言っていることだが、精神疾患をもつ方の多くは、

病識があり、治療や服薬をしながら社会参加している。

よって、精神障害者=危険だ!ということが言いたいわけでは決してないし、

そのような方々が利用しやすい医療、制度であるべきだとも思う。

 

だが一方で、病識がなく、必要な治療を拒んでいる対象者も、一定数いる。

これは紛れもない事実であり、そういった方々が医療につながるチャンスは、

もはや措置入院しか選択肢がないような状況だ。

 

しかし措置入院とは、「自傷他害の恐れ」のあるケースに限られ、

それはすなわち「命」に直結している。

一歩間違えば、この事件のように、無辜の命が奪われてしまう。

 

そしてそうなって初めて「加害者は精神疾患なのだから、治療を」と言われる。

あまりにもデタラメな現実ではないか!

 

被害者の男児のことを思えば、加害者を擁護することはできない。

だがやはり俺としては、加害者が精神疾患であった以上、

こうなる前に精神科医療で救ってやることはできなかったのか!

それが、罪のない男児(=地域住民)の命を守ることにもつながったのだ!

と、腹が立って仕方ないのである。

 

病識のない精神障害者、治療を拒んでいる精神障害者をどう医療につなげるか。

この課題に真摯に向き合わない限り、

そこから先の医療制度や仕組みをいくら充実させたところで、

悲惨な事件はなくならない。

 

そしてこのような事件が続いてしまえば、

実態を知らない一般市民は、漠然と「精神障害者=危険」と考えるようになり、

治療を続けながら普通の暮らしを送っている精神障害者の方々までが、

無用な偏見の目にさらされるのではないか。

俺はそれを危惧しているのである。

 

追記:コミックバンチwebでは、一昨日から、

『「子供を殺してください」という親たち』の第一話(電子版)が読めます。

コミックバンチwebには、さっそくいろんなコメントをいただいていますが、

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