アウトサイダー一番煎じ
先週、NHKのEテレで「相模原事件を受けて 精神医療は今」という番組をやっていたのだが、登場していた超有名な賢人の精神科医が、「善意のおせっかい」という表現を使っていたので、「いいね!」とつぶやいた。
実は下に引用したように、俺の著書『「子供を殺してください」という親たち』、『子供の死を祈る親たち』でも、危機介入について、たびたび「おせっかい」という表現を使っていたからだ。
今や社会においても、また家族においても、「個」が尊重される時代となり、かつての「おせっかい」文化を、私たちは失いつつあります。私の提言するスペシャリスト集団は、言うなれば建設的な「おせっかい集団」でもあります。
引用:『「子供を殺してください」という親たち』p286
スペシャリスト集団は、言ってみればおせっかいやときには「悪役」を担う立場です。専門家の矢面に立ち、業務を円滑に進めてもらうためにも、本人とコミュニケーションを継続し、言いにくいことを代わりに言ってあげるのです。
引用:『子供の死を祈る親たち」』p432
俺の活動を長く応援してくれている知人もEテレを観たようで、「押川さんのパクリじゃないの~?」なんて笑いながら電話をかけてきたが、俺はパクリかどうかにはまったく関心がない。ただ、他人様が言うのを聞いていても、やっぱり「おせっかい」っちゅう表現は最高やね!と思った。
それで思い出したんだけど、以前、某媒体で取材を受けたときに、取材陣の若い人から、こう尋ねられた。
「押川さんが移送サービスを始めたあとに移送会社が乱立しましたが、真似されて頭に来なかったんですか?」
俺は、「二番煎じより一番煎じが一番だよ」と言っておいた。
移送の仕事だけじゃなく、過去には、初めての著書(子供部屋に入れない親たち)を盗作され、自立支援施設をはじめれば、ホームページまでソックリの類似施設が登場したこともある。でも類似のものが登場し、比較対象ができたからこそ、「よし、俺はもっともっとその先の本質を極めるぞ!」と思い、それがエンジンになる。
それからは、行政や医療機関も見放し、同業他社も手をつけない……家族が「もうトキワさんしかないんです」と言うような、超最難関のケースをあえて選んでやってきた。
評価とは、周りの人間が判断するものだ。現に若い取材陣に、「例えば、私以外の移送会社を呼んで、取材しようとか考えたりしますか?」と聞いたら、思いっきり首を横に振っていた。それも一つの評価だと思う。
医師や看護師などずっと本流を歩いてきた有資格者からしてみれば、俺のような存在は支流っちゅうか傍流っちゅうか、アウトサイダーそのものだろう。しかし実はここへきて、その有資格者の方々から「説得の手法を教えてくれ」「危機介入のノウハウが知りたい」という依頼が相次いでいる。
アウトサイダーの道も極めれば、本流と同じか、もしくはそれ以上の「本当の答え」にたどり着くのかもしれない。