夢と希望と勘違い
俺のところにくる相談で意外と多いのが、トラブルを抱えた若い女の人の案件だ。
そもそも、俺は「本気塾」でいろんな若い人を預かってきたけど、男性に共通しているのは、「働かない」「働くことが嫌い」ってことだった。その点、女性陣は、「働く」ことに関してはすごく前向きだし、実際に仕事をさせれば、一生懸命、真面目にやる。
なんでそんなふうに真面目に働くことができる女の人が、トラブルに巻き込まれて、俺なんかの助けがいるようになるのか。詳細は違えど、本質の部分はおどろくほど似通っている。
第一に、みんな、きちんと勉強して本職でやれる資格を持っていたり、たとえば語学に長けているとか、人にはないようなすばらしい能力を持っていた。それにも関わらず、そこに集中して邁進するということをしていなかったんだな。
「簡単に金が稼げるから」「男にちやほやしてもらえるから」「楽しいから」…そんな理由で、その人の本領ではないところに、せっせと顔を出していた。たとえばそれは水商売だったり、いろんなサークルだったり、どっかの団体だったりするんだけど。
俺は別に、水商売をやっている女の人を差別するつもりはない。歌舞伎町で、その道ウン十年とやってきたホステスの知り合いもいるが、それはそれで、人間力がスゴいからね。そっちの世界で生きていきたいなら、本腰入れてやれよ、と思うだけだ。
俺んところに助けを求めることになる女性陣は、ヤバい世界に体、半分つっこんで、なおかつまともな世界にも、体、半分おいておきたいっていう、とにかく中途半端な生き方をしていた。そんで最終的に「どうしようもない男にひっかかった」っていう点も、みんな見事に共通していたな!
本人は「素敵な男に巡り会えた!」って思ってるんだよ。でもそのうちに辻褄が合わなくなって、なんかおかしい…って俺のところに相談にくる。そこで、俺が表から裏から客観的に見てみると、男にいいように利用されているだけだった…っていうことが分かる。たとえば、ヤバい組織(暴力団とかね)にカモにされて、知らないうちに犯罪の片棒をかつがされていたりね。
「そんなにあっちこっちに顔出して、足突っ込んで、何がしたかったの?」俺が聞くと、みんなこう答える。「仕事の成功も、ちゃんとした結婚相手も、子供も幸せな家庭生活も、お金も、全部欲しかったんです」ずいぶん欲張りな話じゃないか?
そういやちょっと前に、林真理子の「野心のすすめ」って本を読んだ。文学の世界で、長らく第一線で活躍出来ている人って数えるほどしかいないから、興味をもったんだな。本を読んで、林真理子は、「仕事も結婚も子供も…」って野心を抱いて、それを叶えてきた人だってことが、よく分かった。なかなかすげー人だな、とも思ったよ。
だけど、俺んところに助けを求めにくる女の人と、一個だけ大きく違うことがあった。それは、林真理子が「自分はブスだ」ってことを自覚していた、ってことだ。
だからこそ「直木賞」っていうデカイ野心も持てたんだなと、俺は思った。そこまで突き抜けないと、自分の価値を認めてもらえないと考えたんだろうな。たぶん、それに向かってすごい努力もしたんだろう。
俺んところにくる女性陣はみんな「私は極上の美人です」って顔して来たもんな。実際には、そんなたいしたことねーんだよ? 化粧を落とした日には、「お前、ブスじゃん」って、俺ははっきり言ってやるんだけど、みんな見事にムッとするよ。
でもな、そうやって中途半端に勘違いするからこそ、林真理子みたいに歯を食いしばって努力することもしないし、結局は、筋金入りの悪い男に利用されることになるんだよ。
一度、どうしようもない闇社会の毒牙にかかってしまったら、あとの人生、表で生きることは難しい。あれもこれも欲しがった結果、夢も希望もなくしたね…って俺は思う。
何もかもを捨ててでも、夢や希望をもつ。そっちのほうが幸せへの近道だと、俺は思うんだけどな。