核心を突かれた! 加山先生によるコミックス第4巻レビュー

評論家の加山竜司先生が、さっそく第4巻のレビューを書いてくれた。

『「子供を殺してください」という親たち』の「確信の4巻」

そして原作者の俺は、またしても加山先生のレビューに唸らされた。いや、正直に言うと、「ワオ! やられた!」という気分だ。なぜなら加山先生が指摘した「世間体」というキーワードについては、まさに今回の核であり、「4巻が出たら、“世間体”に関するツイート連投するか!」と考えていたのだ。

 

「世間体」という悪魔

漫画もそうだが、原作の文庫を発表したときから、「精神疾患の原因が、家族(育て方や親子関係)にあるかのように書かれている」という批判を多くいただいている。近年、精神疾患は遺伝や脳の器質的な問題が関係していることが明らかになっていることもあり、「親」や「育て方」に言及することに嫌悪感を示す方は多い。

だが経験上、問題がハードになるほど、家族(親)の影響は見逃せないほど大きいと感じている。遺伝や器質があるにしても、我が子が精神疾患に罹患していることを、家族が受け入れるか、否定するか? その差は大きい。病識を持ちにくい病だからこそ、早期治療や治療継続のためには家族の理解とサポートが欠かせないのだ。

子供の病気を受け入れず、第三者(保健所など)への相談もしていない。相談に行っても病状の深刻さや生育過程の問題を正確に伝えていない。ひどい暴力を振るわれているのに警察に相談しない。家族同士で事実を隠しているケースさえある。このような家庭には、例外なく「世間体」という悪魔が潜んでいる。これこそが最強の闇だ。

はっきり言う。家庭という密室において、なおかつマイナスの出来事が起きているときには、世間体を守ったところで何も良いことはない。いくら医療が発達し、支援の網が広がっても、家族が世間体を優先してしまったときには、その網からこぼれ落ちてしまう。医療や支援の網もまた、「命を守る」という本質よりも、マニュアルや自分たちの立場・地位など世間体を優先するからだ。

それでも「世間体って大事でしょ」「他人から馬鹿にされるなんて耐えられない」という人もいるかもしれない。日本はとりわけその傾向が強い。そういう人には、「死んでからもその世間体を守れるのかい?」と聞いてみたい。お墓に入ってしまえば、世間体も何もないのである。

家族の問題に限らず、目的の達成や、トラブル解決のためには、「世間体をかなぐり捨てる」ことが一つの条件になる。世間体というフィルターを外して本音に向き合うことが、その人らしく生きる秘訣でもある

 

オノマトペの少なさ

もう一つ、加山先生の指摘「オノマトペの少なさ」について。これは、漫画家・鈴木さんのこだわりでもある。鈴木さんの他の作品と見比べても、「子供を~」は、かなりスッキリと描かれている。俺は連載当初、「もっと描き込んだほうがいいんじゃないか!?」なんて意見を言ったことがある。しかし鈴木さんと担当編集者・岩坂さんの意向で、現在の雰囲気に落ち着いている。

その分、俺の役割として「セリフ」にはかなり力を入れている。実際、説得移送の現場では、脳みその回転もいつもとは違うし、出てくる言葉も異なる。現場でしか出てこないワードや言い回しがあるのだ。若い頃は、説得移送のあとは頭や口が痺れたようになり、数日は通常の会話ができなかったくらいだ。

そんなわけで、プロット(原作)の作成や、仕上がった漫画を確認する際、俺はまるで現場にいるような感覚にまで集中力を高め、渾身の「セリフ」を絞り出している。ときとして読者には伝わりにくい「セリフ」になってしまうこともあるのだが、そんなときは鈴木さんと岩坂さんが絶妙に料理してくれる。けっこう疲れる作業だが、加山先生のように“変態的”に(褒め言葉です!)、漫画を読み込んでくれる読者のためにも、これからも頑張っていきたい。