加山竜司先生から8巻のレビュー到着!
12月発売のコミックス8巻について、ライターの加山竜司さんからまたしても素晴らしいレビューを頂戴しました。原作者の俺ですら見落としていたようなところにまで目を向けてくれていて、いつも勉強になります。ありがとうございます!
レビューは加山さんのブログ「マンガを読む 」をじっくり読んでいただくとして、以下について、俺からも言及しておこう。
この8巻で驚いたのは「#35:【ケース14】カラカラになって相談にくる人たち①」P.34~35の見開きだ。見開き黒ベタに、「もう……」「何もかもだめじゃん……」の2つのフキダシのみ。相談当事者の絶望的な心境――実際には相談当事者が感じているほどには絶望的な状況ではないのだが――、すなわち「心の余裕のなさ」を的確に表現している。だけど、これをやるのは勇気がいる。このネームを通した作者と編集に拍手を送りたい。
俺自身、スタッフからこの相談内容について報告を受けた時に、相談者の「もう……何もかもだめじゃん……」というつぶやきに、きょうだいだからこその悲哀・絶望・親への怒りなど……諸々の感情が端的に表されていると感じた。
長期ひきこもりも含め、子供の問題はいよいよ、親から当事者の「きょうだい」に代替わりしている。きょうだいは、高齢で動けなくなった親に対して「何とかしてくれるのではないか」と、まだ考えている。親の資産について何も知らないことも多く、親にお金を出させれば、うちのような民間に丸ごと解決してもらえるんじゃないか……と期待を込めて相談にくる。
しかし俺のところに相談にくれば、家族の真実があらわになり、「親は動く気も金もなし」ということが丸わかりになる。問題解決のためには、自分が汗水たらしてがんばるしかない。淡い期待は幻想だったことを知る。
きょうだいにできることがあるとしたら、そうなる前に(問題が長期化しないうちに/親が高齢化しないうちに)早め早めに「実家」の実態を把握して、できることからはじめておくしかない。早期の段階なら、行政機関や医療機関も話を聞いてくれるのだから。
そういう意味では、8巻の【ケース14】「カラカラになって相談にくる人たち」は、「親のハラづもり」が分かる内容にもなっている。「こんな大問題を放置して、うちの親は何を考えているのか、さっぱりわからん」と思っているきょうだい(の立場の相談者)がいたら、ぜひ読んでほしい。その上でどうするかは、結局、アナタが決めることなのだ。
そして続く【ケース15】は、「夫婦」の相談ケースが登場。こちらも、【ケース14】と本質は似通ったところがあって、家族の誰が対応をとるのか、家族としてどうしていくのか。そこんところをきちんと筋道立てておく必要がある。
ときどき、「押川は病院にぶっこんでるだけじゃねーか」という批判を頂くのだが、そうじゃないんだよな。医療につなげるまでの過程において、家族全員における問題点を暴露する。簡単に「本人が嫌がるから」「無理なことはしたくない」「本人のため」とか言っちゃう家族の言動は、やさしさに見えて、実はズルさや適当さ、不誠実さの裏返しであることが圧倒的に多い。そこに向き合えないまま医療につないだところで、あっけなく退院(離院)して、通院も服薬もせず、元の木阿弥になることは、それこそ漫画でも何度も描いてきた。
相当な腹くくりをするだけじゃなく、脳みそを使って誠心誠意取り組まないと、家族の問題は解決できない時代になった。今年はコロナ禍もあって、そのことをますます感じた一年だった。
連載はまだまだ続きます。今後ともよろしくお願いいたします。
皆様、どうぞよいお年をお迎えください。