おしらせ

俺が藤重道治というディレクターに出会ったのは、9年前のことだ。

当時藤重は、俺の取材に来た別のディレクターの下で、アシスタント的な雑用もこなしながら、カメラを回していた。物静かで控えめで、ただ淡々と、しかし延々とカメラを回している。そんな印象をもった。

 

それから縁あって、俺の特集を二本、彼が作ってくれた。自然と行動を共にする機会も増え、一緒に飯を食ったり酒を飲んだりするようにもなった。この藤重という男は、俺の知る限りでは、“挫折”しかない人 ...